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〇我星

「タマモ、何をすればいいのにゃ」

「お客さんのお酒の相手をすればいいの。楽勝よ」

「そんないい仕事があるにゃ」

「あとは、その謎の女を調べるの誰だろうそれも聞き逃しちゃった」

 着替えると番頭がやってきた。

「新入りさん、名前はなんというんだ」

(くず)の葉です」

 タマモが答える。

「わたしは・・・」

 フースーが困っている。

白虎(しらとら)ちゃんです」

 タマモが助け舟をだした。

「葛の葉に白虎は最初は二人で組んで祇王(ぎおう)にいろいろと聞きなさい」

 二人は祇王という先輩白拍子について仕事を始めた。


 ハルアキは佐助と打ち合わせを済ませ導魔坊を出ようとしていた。そこへ清盛が帰って来たのであった。

「おかえりなさい。清盛さん」

「おお、ただいま。この間は助かったぞ。サテュロスはヨダル老師に預けたぞ」

「そうですかそれなら安心だ」

「ところで佐助とどこに行こうとしているのじゃ」

 佐助が清盛に説明をする。

「なんとそんなことがあったのか。その茶屋は祇王がいるところではないか」

「清盛さまなじみのいる茶屋でしたか。康成殿に頼んでしまいましたがよかったでしょうか」

「俺が調べてやる。康成を呼べ」

「もう先に行ってしまわれました」

「あいつめ、そんなことには熱心なやつだな。茶屋には私からお前たちへの便宜を図らってみよう。まいろうか」


「あの出不精な奠胡(テンコ)はどこにいったんだ。迦樓夜叉(カルヤシャ)

「祇園へ新しいしもべを作りに行ったよ」

「あいつのことだまたすぐに部下に愛想をつかされて逃げられるだろう」

「ガスタの魔石を使うとか言っていたけど、ガスタも奠胡を嫌っていたのに気が付いてないのかね。鈍感なやつだよ」

「はっはっは、それはいい。俺はまた気晴らしに出ていくから留守番頼むぞ」

「ちょっと待て」

 引き留める迦樓夜叉を後目に出かけて行ってしまった槌熊(ツチグマ)であった。


「おい番頭、大黒屋を呼べ」

 茶屋に着くなり主を呼ぶ清盛であった。

「これはこれは清盛さま。毎度のごひいきありがとうございます。祇王を準備させますのでお待ちください」

「いや、大黒屋、今日はちと頼みごとがあってきた。この二人を下働きとしてこの店で働かせてやってくれ。ちょっと調べたいことがあっての」

「もしや我星(がほし)のことでしょうか」

 我星とは奠胡と思しき謎の男に連れ去られた白拍子のことである。

「ああ。その通りだ。話が早い。どんな具合だ」

「あの男と戻って以来、部屋から読んでも出てこないのですよ。お金はたっぷりといただいておりどうしようもないのです」

「ハルアキ殿、一刻を争いますな。部屋に飛び入りますか」

「ちょっと待ってよ清盛さん。何か作戦を立ててからことを起こさないと」

「清盛さま。お店の評判にお関わりますので何卒穏便によろしくお願い申し上げます」

「うむ」

「僕がまず様子を見にお茶でも持っていくからそれからにしましょう。大黒屋さんよろしくね」

「は、はい準備しますのしばらくお待ちを」


 お茶屋の別の部屋では祇王が客の相手をしていた。

「これはこれは、おこしやす。これは新しく入った葛の葉と白虎です。頭を上げなさい」

 頭を下げていたタマモとフースーが見たものは康成であった。

「このスケベ爺、こんなとこで何してるんだ」

 小さな声でつぶやいた。

「おお、かわいい子たちじゃ。ほれ、こっちへ来て酌をしておくれ」

 タマモが近づくとおしりを触ろうと手を伸ばすが、すんでのところでつかまれて耳元でささやく。

「こら!エロ爺、タマモだよ。任務はどうした」

 みるみる康成の顔色が変わる。

「おお、そうじゃったの。祇王よ。ちと聞きたいことが合ってここへ参ったのじゃ。内密に頼むぞ」

 しどろもどろになりながら、祇王にしゃべりだした。

「あれ、康成様、どのようなことでしょう」

「単刀直入に聞こう。我星のことじゃ。どうしておる」

「あれ、よくご存じで、すっかり人が変わったようになってしまって驚いていたとこなんですよ」

「ほう、どのようにじゃ」

「静かでおとなしい子だったのが、目つきもきつくなって言葉も荒々しくなってしまって、変な男と部屋にこもったきり姿を見せなくなってしまったんですよ」

「祇王、どこの部屋」

 タマモが聞いた。

「葛の葉、何であなたがそんなことを聞くの」

「教えてにゃ」

「白虎ちゃんまで、ここの廊下をまっすぐ行った突き当りよ」

 二人は飛び出していった。こうなるとタマモのペースで事が運んでしまった。せっかくのハルアキの計らいも水の泡となったことを知る由もない。

 ハルアキがお茶を持ってくる数分前のことであった。

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