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〇台湾料理

「あのバカが帰ってこないぞ」

 奠胡(テンコ)はいらいらしてそこら辺をうろうろと動き回っていた。あまりに導魔坊が静かなので居ても立っても居られない様子であった。

「あんまり部下をいじめると逃げられるぞ」

 槌熊(ツチグマ)は面白がってみている。

「導魔坊へ矢文でも放って予告状でも送れば、福原が大変とか」

「福原がどうしたといううんだ。迦樓夜叉(カルヤシャ)?」

「奠胡がサテュロスを使って冥界クインテットのバグログを再生して送り込んだのにやつらが何もあわてていないのが気になっているんだよ」

「それならやられたということだ。サテュロスともども、あの小僧が福原にいたそうだから」

「何、あのドーマハルトに似た小僧、ハルアキといったか。奴がなぜ先回りしているんだ」

「たまたまじゃねぇのか。奴ら妙にツイているからな」

 槌熊は笑っている。

「ところで冥界クインテットと言ったな。エキドナもいるのか」

「いや、あの女の魔石だけサテュロスが見つけてこなんだ」

「そうか」

 なぜかほっとする表情の槌熊。向こうの世界で自分が死んでからのシーモフサルトの出来事は迦樓夜叉からあらかた聞いていた。エキドナも死んで結界の礎となったことも、ただ聞きはしなかったが息子ツキノワのその後のことは今も心残りの槌熊であった。

「次の作戦はもっと準備をして再生魔人を送り込まねば。あのバカが死んでしまっては駒が足りん」

 さらにイライラを深める奠胡であった。


「さあ、晩御飯早く来い」

 風呂上り浴衣に着替えて食堂で待つハルアキであった。いつもはつまみ食いがてら厨房を覗くのであるが、今日は買ってきた食材を知っているのでリクエストをしてある。

「坊ちゃま、お待たせだで」

 フカひれのスープを持ってタウロが厨房からやってきた。続いて清八、喜六が中華前菜盛りを持ってきた。

 そして待望の豚の角煮と割包(グァバオ)を持て来た。

 割包(グァバオ)は中華のパンのようなもので角煮と野菜をはさんでハンバーガーのように食べる。台湾料理だ。

「これこれ、食べたかったんだ。昔、神戸の南京町へいった時に父さんと母さんと一緒に食べたんだ」

「食べ過ぎて動けなくなったんじゃろう」

「あれ、ドーマさんどうしてわかったの?」

「ハルちゃん、美味しいね。食べ過ぎるのもわかるわ」

「坊ちゃま、滷肉飯(ルーローハン)もあるだで食べ過ぎてはだめだで」

 滷肉飯は角煮のあんかけご飯だ。

「奥様には琵琶湖で取れた瀬田の蜆で醤油漬けもあるだ」

 蜆の醤油漬けも台湾料理で鹹蜆仔で(ギャムラーアー)たっぷりのニンニクと唐辛子も入っている。

「あら、これはビールに合うわ。タウちゃんビールお代り」

「うちのミケーレちゃんもタウロの料理が気に入ったみたにゃ」

「フースーさんはヨダル老師みたいにお家に帰らなくてもいいの?」

「ここはお風呂も料理も最高だにゃ。貴船神社の社には戻らなくていいにゃ」

「じゃあミケーレ、ミケちゃんもここにいるんだね。うれしいよ猫を飼うのが夢だったんだ」

 魔石を食べてしまうネコなど普通の猫であるはずがないのであるがハルアキは膝の上にミケーレを置きなでながら喜んでいた。

「それよりハルアキ、オオガミに報告したか」

「あっそうだ。オオガミさん、バグログをやっつけたよ。まだ残り三体いるんだけどどんな奴らなの」

「うむ、バグログは相対したことはないが大事な仲間をやられた相手だ。よく一人でよく倒せたな」

「オオガミさんとの稽古のおかげだよ」

「慢心するでないぞ。おそらく残りはガスタ、マイコニド、バグベアだろう」

「ピコーナ、どんな奴ら」

「ピコ、ガスタは食屍鬼(グーラ)で聖なる力が弱点ピコ」

「あんまり食事中にする相手の話じゃないけど聖なる力って?」

「お前の常世送りの力で対抗できるというわけだ」

 ドーマが助言をした。

「光の矢っていう呪文思いついたので練習しておくよ。それで動きを止めてとどめだね」

「ピコ、マイコニドはお化けキノコだピコ。毒を吐いたり分裂するピコ」

「キノコか食べられないほうだね。よく焼いて黒焦げにしちゃおうか」

「狐火をよく練習しておかんといかんな」

「ピコ、最後のバグベアはゴブリンの親方だピコ。ゴブリン吸収してどんどん大きくなるピコ」

「もしかして、合体の核みたいなもの狙えばいいんじゃない」

「よくわかったな。そうだ心眼で敵の魔石を狙えば、たやすい相手だ」

 オオガミが正解だと言ってくれた。

「これだけ敵のことがわかっていれば、慌てる必要ないね。大体やられた怪人は再生して登場すると弱いからね」

「なんだそれは」

「オオガミ、そこは突っ込まないでいい」

 ドーマはなぜか昭和の特撮物の知識があるようだ。ハルアキもうすうす気が付いていたが何故だかわからない。

「でもどうしてオオガミさん、冥界クインテットの残りがそいつらだと知っているの?」

「ああ、もう一つの魔石は俺が回収してある人物にあげたからだ」

 オオガミの顔が寂しそうだったからそれ以上は聞けなかった。

「わかっていると思うがハルアキ、油断は禁物だぞ。不測の事態が何か起こるかもしれんということは肝に銘じておけ」

 最後にドーマに注意を受けたが今宵の食事に満足していた。


「しかしサテュロスがおらんと不便じゃの。このガスタの魔石をこの世の人間に使ってしもべにするか。よく言うことを聞きそうな人間を探すとするか」

 奠胡(テンコ)は愛宕山のアジトを出て闇夜に消えていった。

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