●ゼブル教団
魔石インカム、Qの作った通信ガジェットだがモモたちを乗せた護送車が護衛も付けずにブヤシ区の要塞を出たとの連絡が入った。二時間ほどで収容所に着く計算だ。
「特に罠も何もなさそうだ。オオガミが車を止めてその隙に運転手を倒してモモたちを奪還する」
護送車がやってきた。オオガミが車の前に立ちはだかる。車はスピードを上げてオオガミを引き跳ねようとしたが、オオガミは車をがっちりと掴み動きを止めた。
イソルダ、アルジェが運転手を倒した。
護送車の後部の扉を開けると、護衛の兵士が三人ほどいたが問題にならない。
「モモはどうした」
車の中に一人だけモモがいないことに気が付いた。ドラムのピンク・ワン フローラが
「要塞の中にまだ一人残されています。マイコニドともう一人のザグレット枢機卿から政府に協力するように説得をされています」
「ザグレット枢機卿、誰なんだ」インカムでQに照会をしてみた。
しばらくして、ペティから連絡が入った。
「ハルト閣下、シーモフサルトの国家宗教であるゼブル教団の大幹部です。謎の多い組織で情報があまりありません」
「ゼブル教の人間がマサカドの幹部とつながっているとは調べてくれ」
「フローラ、少し要塞の情報をもらうぞ」
ハルトはフローラの頭に手を触れ直接要塞の情報を受け取った。
「オオガミ、俺が一人でモモの救出に向かう。みんなでヘイ・オン・ワンのアジトで待っていてくれ」というと
あまとぶや
かりのゆくさきしめしけれ
かのちめざしてとぶらう
転送
直接要塞の中に転送をした。要塞の護衛の兵士を一人捕まえて
「おい、モモはどこにいる案内しろ」
背中に短剣を突き付けてモモのいる場所まで案内させた後気絶させた。
「モモ、大丈夫か」
「ハルト閣下、問題ありません」
モモの腕をつかむと転送で外へ出た。
「ここまでくればいいだろう。みんなの元へ帰ろう」人込みに紛れていった。
「何、あの女に逃げられただと、何をしていたんだ!」
マイコニドが報告に来た兵士を叱責する。兵士はレジスタンスカードを渡した。
「やはり、レジスタンスが動いたか。マイコニド仕掛けは施してあるのだろうな」
「枢機卿さま、私の分身を忍ばせております」
「行け、マイコニドやつらを見つけ出せ」
「ははっ」
ハルトの予感が何かを告げている。
「モモ、ちょっとそこに立ってみてくれ」
鑑定をモモにかけてみた。
「すまない」ハルトはモモのポケットに手を入れた。
そこに小さなキノコがあった。
「ちょっと寄り道をしようか」
人気の少ない公園のベンチに二人で腰かけた。
「やつらはお前たちのバンドをプロパガンダに利用しようとしたんだな」
「はい、ユートガルトへの戦いの歌を歌えと迫ってきました」
「笑い話だな。敵のプロパガンダを利用しようとは、ところでザグレット枢機卿について何か気づいたことはあったか」
気になった枢機卿について聞いてみた。
「どうもシーモフサルトの政府を裏で操っていのがゼブル教団ではないかと」
「なぜそう思う」
「教団のメリム教皇からの命を受けてきたようで、マイコニドはそれに従っていました」
「やはり教団を調べる必要がありそうだな」
「モモ、釣れたぞ。戦いの準備をしろ」
マイコニドとその兵士たちが公園に入ってきた。
あまびこの
おとをまゐらすわりなしの
さがなしものにさながらうす
雷撃
あらかじめ公園の地面には魔法陣が描かれていた。
うち漏らした兵士をモモの狐火が襲った。
マイコニドは最初の電撃をかわして毒の胞子をはき始めた。
「いかん、モモ下がれ俺がやる」
毒耐性のあるハルトにこの攻撃は無意味であった。マイコニドは自分の兵隊がその毒で倒れるのもいとわず迫るハルトに吐き続ける。
「なぜ倒れない」
あせるマイコニドにハルトは剣を突き立て
ちはやぶるかみのちぎりしほむろあれ
おほけなしものをしたたむれ
火柱
「焼きキノコの出来上がりだ。冥界クインテットもソロを残すところとなったな。モモ帰ろうぜ」
マイコニドの魔石を拾いカードを置いた。