●密告者たち
「テンコがユートガルトのレジスタンスに一泡食わせたというのは本当か、カルヤシャ」
カクシ区の要塞にはシーモフサルトの三魔人の一人カルヤシャが訪れていた。
「ガスタ悔しいが本当だ。旅団の中隊長を始末したらしい。あやつらにはエンドワースのミノでしてやられて、何とか一矢を報いたいのだが何か考えはないか」
「レジスタンスの活動は素早くてこちらが駆けつけたときは妙なカードだけが残っているだけでなんとも歯がゆい思いを私もしているところなのだ。こんな時はテンコの悪知恵が役に立つのだがあいつに頼むのも気が悪い」
「そうだなあいつは利用するだけ利用してツチグマを見殺しにするようなやつだからな」
悪女二人には妙案は浮かばないようだ。
「ハルト様、ガスタの集める人の傾向というか理由がわかりました」
「なんだそれは」
「密告です」
「密告?なんだそれは」
「レジスタンスではないかと疑われた人たちがつかまっているようなのです。報酬が出るようです」
「それには心当たりがあります」
「アオナ、知っているのか」
「占いで人の心を読んだとき、何人かの住人がシーモフサルトに協力してお金で情報提供しているものがいました」
「許せん奴らだな。いくら保身のためとはいえ仲間を売るとは、ちょっとお灸をすえるか」
その住人は仲間を売って生計を立てていた。そこへいきなりシーモフサルトの兵隊が家にやった来た。
「ココス、早く出るんだ。ついてこい」
「ど、どうしてですか。いつものように密告させてもらったのに」
「つべこべ言うな。早く来い」
そうして、密告していた住人たちは広場に集められていった。それぞれに顔を見合して何故といった様子であった。
レジスタンスを利用して、互いに密告しあうように情報を操作したハルトであった。そしてその中に巧みに自分とアオナを滑り込ませていた。
アオナが下を向き顔を隠した。ハルトがやってきたガスタを見るとその横にカルヤシャがいた。ハルトは前に対峙したときは陰陽の面をかぶっていたがアオナは面が割れている。
「しまったな。カルヤシャまで居るとはうまくやり過ごせればいいがアオナ用心しろよ」
「はいなるべく顔を見せないようにしておきます」
十数名の捕らわれた住人は折に閉じ込められ砦まで連れられて行った。
そして留置所のような場所に全員閉じ込めた。
「どうだお前たち、逆に密告されるとは思っていなかっただろう。自分のしたことを思い知ったか」
「何を言っているんだお前は、何かの間違いに違いないんだ。すぐにガスタさまが解放してくれるに違いない」
「甘いな、そんなことが本当にあると思うのか。おまえたちが売った人たちが戻ってきたことがあったか」
黙り込む密告者たちであった。
「少しは反省したようだな。俺はユートガルトの王だ。しばらく待っていろ」
驚愕の表情が密告者たちに浮かんだ。あるものはいい情報が手に入ったと思い利用しようと考えたが、苦しむシーモフサルトの救世主になるのではと考え直した。
要塞の外が騒がしい。
「ハルト様始まったようです」
爆発音がなった。