▽アーロンの悩み
格納庫の上陸用舟艇カミーラの前では竜族の王子アーロンが槍の練習をしていた。
「姿が見えないと思ったらこんなところにいたのか。みんなと一緒に食事をしないのか」
「晴明さんこそどうしてヤジロウと一緒じゃないんですか」
「アーロンこそどうして彼らと行動しないんだ。気になるな、理由を教えてくれないか」
天鼓は晴明を左手で抑え
「そういう時もあるよな。距離を置いて付き合いたい時もな。無理をしなくていいんだよ。あとで輝也が点心を持ってやってくるから一緒に食べよう。さあ船に入りなさい」
アーロンを船に押し込んだ。
二人で映画を見るためにカミーラまできたのだがアーロンのただならぬ様子に天鼓は黙ってアーロンの前に座っているだけであった。晴明が何かを思いついたようで
「君の父ヨシュアと旅を始めた頃の話をしようか。私が喋ったことは内緒だよ」
アーロンは身を乗り出して
「ぜひ、王も王妃も昔の話はしたがらなくて二人を知る晴明さんならと思っていたところです。誰にも漏らしません」
「君と同じ十五の時だ。ベゼル教団との戦いが始まり親父と共にユートガルトのハルトの街と呼ばれる地を目指す旅していたとき洞窟暮らしをしていたヨシュアと出会ったんだ」
「ドラゴノイドの男たちが暮らすエヴァグランドマザーのところですね。それは過酷な環境だったと聞いています」
「あの頃のヨシュアは自分に能力に自信を持てず引きこもりがちだったんだよ。でもそれを乗り越え龍化を得てサマラの心を掴んだんだ」
「どうやって乗り越えたんですか」
「一人で立ち向かいサマラを守るために戦ったからかな。君にもその血が流れているんだ自信をもちなさい」
「でも彼女がどう思っているかわからない・・・」
晴明はまさかアーロンに意中の人がいるとは思ってもいなかった。昔からその系統には疎いところが晴明の弱点であった。天鼓が
「私が当ててみましょうかその意中の人を」
「ダメです!!絶対に言わないで」
アーロンは下を向いて黙り込んでいると輝也が点心を持ってやってきたのだ。




