▽飲茶
再びタウロたちが厨房から何種類も蒸籠を持って現れた。
「どうやら飲茶をするみたいだな」
「親父やお袋と違ってお酒を飲まないひなたちのことを考えたんだろうな」
天鼓と会談中の晴人と晴明はそう話した。そこへタマモが乱入した。
「どうかなぁ晴ちゃん、初めてのお酒は、約束の天ちゃんとの乾杯は」
晴明は天鼓と再び交わる日まで十五年間も禁酒を貫いていたのだった。未成年から初めて酒を口にしたのだ。彼には毒耐性がありアルコールも対して影響力がないのであるが飲酒とはただ酔えばいいと言ったものではない。
「タウロの腕もあるけど、この紹興酒を呑むことで前菜の味が数倍にも美味しく思えるよ」
「そうでしょ、お酒あってこその料理なのよ」
と言って甕から酒を注ぐタマモであった。
「しかしタウロは私の気持ちまで察して点心を選んでくれたんでしょうか」
天鼓も酒を注ぐと蒸籠から大きめの焼売を取り出し食べた。
「それはどういうこと?天ちゃんの心変わりのきっかけでもあったの」
「点心とは禅語由来なんです。心胸点改、空心に小食を点ずるなんです」
「つまり空きっ腹に少しの食事が心を満たすということなんだけど、それがどうして?」
「私はモノリスによって封印されていた記憶を開かれ焦っていたんでしょう。晴明との絆も忘れ世界を守ることに必死でした。それをジローくんの言葉と音楽が彷徨う私の目を覚ましてくれたんです」
「ジローちゃんのファインプレイね。晴ちゃんも感謝しなさいよ」
「心配しなくてもタウロがもてなしてくれてるよ」
と喜多屋を見つめる晴明
「ねえねえタウロ、ラーメンも作れるんでしょ、餃子と一緒に作ってよ」
「アオイの彼氏のジローくんだすか、すごい演奏のお礼にタウロ特製ラーメンと特製餃子をプレゼントするだ。少し待ってけろ。アカネとアオイも厨房に戻るだすよ」
上機嫌なタウロはさらに張り切り出したのだった。




