▽イドの怪物
厨房からメインデッキへ向かう晴明の後ろにひなたが付いてきていた。
「ひなた、みんなと一緒にタウロの手伝をしないのか」
「だって手伝うことが見つからないの、ヤジロウは演奏で応援しているのにボクだけ邪魔にならないかと出てきちゃった」
寂しそうな顔で下をむいている。
「邪魔だなんて誰も思ってないさ。そのままそばで見ていればいいんだよ。それで誰かが何か困ったことがあれば手を差し伸べればいいんだよ。それがチームの役割なんだよ、さあ戻った戻った」
ひなたの向きをくるりと返すと背中を押して厨房へ押し戻した。
メインデッキへと戻ると天鼓たちがモニターと睨めっこしている。
「みんな何調べてるんだ。もうすぐ美味しい晩御飯が出来上がる」
晴人は頭を上げ
「晴明、お前は過去を見て違和感を感じなかったか」
「アスタロトやヴィシュヌのことですね。そんなことを調べてるんですか」
「天鼓の話を聞くとその、つまり・・あまりに脅威とは思えなかったと騙されているんじゃないかと」
「確かにそう感じたけど騙されているとは思えなかったですね」
天鼓が晴明の方へと移動しながら
「幽霊の正体見たり枯れ尾花ということですね。過去の資料を調べても私たちが体験した内容と同じです。アスタロトへの恐れが増幅されそれが具現化して奴らの力を押し上げていったということですね」
「つまり僕たちが育てたやつらを」
輝也も口を開いた。
「増幅され人々の恐れの潜在意識が具現化してエネルギー体としてアスタロトの力となったとか」
天鼓は
「イドの怪物・・・と呼ばれるものですね」
晴人は
「禁断の惑星か・・・つまり人類を滅ぼさないと敵を倒せないていうわけか天鼓」
「禁断の惑星にイドの怪物とは何のことでしょう?親父殿」
フェルオムズが晴人と晴明の会話を遮るように
「みなさん、厨房での用意が整ったようです。食堂へ急いでください」
「頭がこんがらがってきたぜ。飯食って酒でも呑んで整理するか。いくぞみんな」
晴人は食堂へと向かっていった。




