●封印の呪法
ハルトの潜伏の目的は冥界のゲートを閉めるというものだった。ヘイ・オン・ワンの探りでシーモフサルト兵は冥界より召還されていることは調査済みだ。一日に召喚できるの十数体ではあるが毎日のように召還されている。これをそのままにしておくと敵兵がどんどん増えてしまう。
冥界クインテットと呼ばれる五体の魔族がそれぞれの区に君臨している。
この五体を倒して、結界の封印の柱として五芒星をハルトが完成させるという作戦だ。
まずはアーカムスがいるワガシ区へと向かった。
「アーカムス、久しぶりだな」
作業の休み時間にハルトは倉庫にいるアーカムスに会いに訪れた。
「閣下、作戦はお聞きしましたが、ワガシ区の要塞にいるバルログは力強き悪鬼です。要塞の守りは頑強なうえに多くの獣魔も控えております。狙うとしたら月に一度の巡回がチャンスかと思います」
「オオガミの助け入りそうか」
「いえ、閣下がいらっしゃれば大丈夫でしょう。次の巡回まで一週間ありますがどういたしましょう」
「まずは襲撃する場所を考えよう。仕事が終わったら巡回ルートを案内してくれ」
「ではパブでお待ちください」
こちらの地区の秘密のアジト、ヘイ・オン・ワンが経営するパブで時間を待った。
「Q、こちらの暮らしはどうだ」
諜報部の開発部にいたが本人のたっての希望で現場で働きたいという夢をかなえていた。
「はい、カクシにいたときは、家政婦のようなものでしたから、やりがいはありまが、アオナさんたちはどうしているかな」
アオナたちにかなりこき使われていたが案外気に入っていたのかもしれない。アオナに気があるようだがアーカムスという恋人がいるんだよ。
「バルログについて何か注意することはあるかな」
「巡回時は精鋭の部下二十名を引き連れております。襲撃を警戒していずれもかなり武装していますので、レジスタンスの兵士には荷が重いかもしれませんね」
「つまり、俺たちだけで部下も蹴散らさないといけないということか。まあアーカムスの部隊長が三人いるならいけるだろう」
「おまたせしました」
まだ日のあるうちにアーカムスは仕事を終えてやってきた。
「まずは要塞の前まで案内いたしましょう」
仕事終わりの人たちに紛れて要塞前から巡回ルートを二人で歩いた。
「人通りの多いところを廻るのだな。要塞を出たところか帰ってきたところを狙うしかないな」
「そうですね。市民に被害を出さないようにしないといけませんね」
「ちょっとここのバーに入ろう。いい感じじゃないか」
「そこは・・」
ドアを開けると魔族たちが客の中にいた。出るのも不自然だし仕方ないが、死角になるような席を選び座った。聴覚にバフをかけて警戒した。ビールを頼みアーカムスと日常会話をした。
「モモタマはすごい人気ですね。ハルトさん」
「ああ、驚いたよ。まさかの展開だよ。アーカムスは聞いたのか演奏を」
「ええ、アオナと一度見に行きました」
魔族の一人がこちらにやってくる。逃げる準備した。
「おい、お前たち!」
緊張が走った。
「モモタマのファンなのか、俺たちもだ」
ホッと胸をなでおろした。魔族は胸のポケットからタマモのフィギュアを取り出して
「タマちゃんのファンなんだよ。かわいいな」
ほほを摺り寄せる。むっとしたが騒ぎは起こせない。
「はい、あなたほどではないですが好きです」
アーカムスが返事をした。
「そうか、これを見せたかっただけだ。いいだろう限定品だ」
と言って席に戻っていった。
「助かったな」
小声で言った。
「タマモちゃんに助けられましたね」
しかしあんな奴がタマモのフィギュアを持っていること自体に腹が立つ。
「アーカムス、河岸を変えてゆっくり飲もう。いいと店に案内してくれ」
勘定を払い早々に店を後にした。
結局元のパブで食事をした。
「今日は襲撃の予定はないのか。憂さを晴らしたい気分だ」
「ちょっと今は襲撃予定が入っていません。お気持ちはご察しします」
その後、バルログの襲撃までにルーティンワークのアーカムスたちの義賊行動に参加して暴れまくってやった。
一週間がたった。
「いよいよ今日だな」
卦を見ると不安な占い結果となった。しかし決行の変更をしなかった。
しかし、中止すべきであった。