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●漏洩

「アーカムス大丈夫か?顔色が悪いぞ」

「いえ何ともないです。少し頭がボーとするのですがしばらくすれば治ると思います。例の地点で待っておりますので、閣下お気をつけて」

「ローガンにメリンダ、アーカムスのサポート頼むぞ」

 アーカムスたちとレジスタンスの中でも腕に覚えのある十名ほどを残してハルトは出かけていった。


「テンコ、今日われらの巡回中に襲撃があるというの本当か?願ってものない返り討ちの機会だ」

「バルログ、本当じゃ、内通者から連絡があった。準備を整えて出かけるがよい」

 ハルトたちの計画は漏洩(ろうえい)していたのであった。


 ハルトは一人要塞の前に立っていた。杖をつき白髪のかつらを被りよぼよぼと入口に向かっていた。要塞の門が開き数十名の兵を連れて、バルログがケルベロスにひかれた車に乗りハルトの方へ向かってくる。そのまま老人などひき殺すつもりのようである。

 ケルベロスが間近に迫ると杖を振り上げた。ハルトの周りを魔法陣が囲む。


あまとぶや

かりのゆくさきしめしけれ

かのちめざしてとぶらう


転送(インヴィーア)


 ワガシ区の港へとバルログを導いた。転送範囲を絞っていたので引き連れた兵士は数名に減っていた。ハルトは変装を振りとき剣を構えた。

「待っていたぞレジスタンスどもさあ、かかってこい」

 待っていた?知っていたのかこいつは、ハルトは一瞬不安を感じた。これが()の予想だったのか。

 ハルトは折れたクラウドソードでケルベロスを切り裂いた。斧を構えたバルログに向かっていく。斬りかかろうとするとバルログが消え背後から斧がうなりを上げてハルトを襲う。飛び上がりよけるがさらにその上からバルログが斧を振り下ろす。クラウドソードで受けるが押されている。

「結構素早いな。加速(アクセル)

 姿の見えない攻防が続いた。ハルトの加速のタイムリミットが来た。姿を現すハルト、斧が迫る。そこへ二刀流のレッド・ワン、ローガンが加速で参戦してきた。ローガンのタイムリミットが来ると今度はレッド・ツー、メリンダが加わる。三人でローテーションで抗戦するがバルログのスピードは衰えない。

「クッソ!何かアイテムでも使っているのか、アーカムスこっちへ来い!」

 レジスタンスと共に戦っていると思ったアーカムスは立ちすくんで動いていない。

「どうした。アーカムス!しっかりしろ」

 近寄ってみると目が虚ろに宙を見ていた。

「何か術にかかっているな」

 ハルトは解呪を試みるが呪いが解けない。ローガン、メリンダがバルログに押されている。ほかの付き添いの魔族はレジスタンスが倒したようだが絶体絶命だ。

「これか!」

 ハルトは違和感のあるアーカムスの首にかかったネックレスを引きちぎった。

 アーカムスは膝から崩れ落ちて頭を振っている。

「ここは?」

「アーカムス戦闘中だぞ!」

 バルログとの戦いに戻ったハルトは叫んだ。自我を取り戻したアーカムスも戦いに加わろうと立ち上がろうとしたとき。車の中からテンコの部下シレノスが現れ杖を振る。


 レジスタンス兵にもネックレスがかかっている。エンドワースのマナーコで使われた呪いのアイテムだ。

「ネックレスだ!ちぎり取れ!」

 ハルトがアーカムスに叫んだ。

 徐々にレジスタンスたちは獣人化しようとしていた。あわててアーカムスはネックレスに指をかけ引きちぎっていくが、間に合わないと思った瞬間、残りの兵たちのネックレスを引きちぎっていく人影がいた。

「アーカムス、大丈夫」

 アオナが立っていた。

「遅くなっちゃたわね」

「助かったよアオナ、でもなぜ」

「アーカムスそれより閣下を」

 実は今朝、やはり気になりアオナに来るように急遽伝言を頼んだのであった。


 車にはすでにシレノスの姿はない。逃げてしまっている。


 アーカムスはバルログに突っ込んで、渾身の力で胴体をつかんだ。熊族の彼の力は尋常ではなかった。バルログがうなり声をあげる。

「今だ!ローガン、メリンダとどめをさせ!」

 と言ったが、バルログに異変が起こった。体から炎が噴き出した。苦痛にゆがむアーカムスの顔、皮膚が焼けただれていく。

 アオナが弓を連射してバルログの目をつぶす。

「ぐぉぉぉ」

 叫びながらも炎を強めていく、ローガン、メリンダの剣がバルログに突き刺さる。

 やっとバルログは沈黙する。炎は消えピクリとも動かなくなった。アーカムスは腕を放して立ちすくむ。

「アーカムス!」

 アオナが駆け寄り回復呪文、沐浴(アブル)をかけるが効果が表れない。懸命に看病するアオナのうしろから斧が回転して襲い掛かる。バルログの最後のあがきの一投であった。

 アーカムスがくるりと体を変えアオナと入れ替わり背中に斧を深々と受けてしまった。

「アーカムス!!」

「ごめんな。アオナ、ぐふっ、一緒にハルナの旦那の墓参りに行けなくて」

 焼けただれた顔からは表情を読み取れないが安らかに最後は笑ったようであった。

「隊長ー!!」

 ローガン、メリンダも駆け寄り涙を流した。


 ハルトはバルログの首を切り落とし掲げた。

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