☆時空因子
メインデッキに残されたタマモとヤーシャ、四人の子供達は暇を持て余していた。晴人や天鼓が艦内が二人で視察に出たまま帰らないのである。
「天ちゃんもうちの旦那様もいつまで待たせるのかしら。ちょっとフェルムちゃんだっけ教えてよ」
「それではお暇でしたら奥様方だけで艦内をご案内いたしましょうか」
「あれ?声違うね誰?」
「私はオムズ、もう一人のこの艦のコンシェルジュです。それではご案内いたしましょう」
喜多屋は喜んでいた。この船を一眼見た時から興味津々であったからだ。
「こんなすごい船の動力源ってどうなっているんですか」
「ご覧になりますか。名演奏家のジロー様」
「名演奏家だなんて、とんでもないその動力源を見せてもらえるんですか」
と言った喜多屋は驚いた。目の前に突然真っ白な衣装の子供が現れオムズの声で
「着いてきてください。お見せいたしましょう」
「この子がオムズなの!おじさんみたいに渋い声なのにボクたちよりガキじゃない」
「アバターに文句つけてるんじゃないよ。この船の意思で投影してるんだから」
「アカネの言う通りですわ。私も動力源が気になっていますわ。ヤジロウさん行きましょ」
アオイは喜多屋と手を組んでオムズの後ろで待っていた。ヤーシャも
「この船は私の管理下だ。同行するぞ、そうするべきだ」
目を輝かすヤーシャも動力源に興味を持っているのは一目瞭然だ。
「なにこれ神社じゃないの、鳥居もいっぱいあるのはどうして」
ひなたは着いて早々に立ち並ぶ朱塗りの鳥居に興味を持った。
「オムズ、教えてこれはなに?なにが動力源なの」
喜多屋もこの鳥居には面食らった。
「このレヴィアタンの魔石を触媒に時空風をエネルギーに替えています。つまり時の流れを受ける帆の役割がこの鳥居なのです」
「?ママ、何のこと言ってるの」
「わかんないわよ。アオイちゃんお願い。説明」
「おそらく時間の流れがエネルギー源ということかしら。風力発電の風の役割をするのが時の流れ」
「なるほどさすがアオイ、ということは無尽蔵な永久機関ということ?」
「ジロー様、無尽蔵ではありません。この船を使う人の思いが尽き果てれば動けなくなります」
「オムズ、わからないよ。いつの思いが尽き果てる時なの」
「あなた方のような因果律、時空因子に囚われた方々の思いです」
「何となく感じるけど、私たち家族のことかな」
タマモがそう言った。




