▽パキラ
「すごい!ジンベイザメみたいな形だ。あれも飛行艇なんですか」
喜多屋はドーマハルト号のそばに止めてある上陸用舟艇を見て質問していた。ヤーシャも彼には興味を持ったのか
「黄泉津軍への上陸戦や揚陸任務時に兵員・車両といった上陸部隊を乗せて岸辺に接舷または直接乗り上げることで上陸させるための小型舟艇だ。晴明たちにも一台貸出している。乗ってみるか」
「えーいいんですか。晴人さんヤーシャさんのお言葉に甘えて見学してきてもいいですか」
「構わないぞ。俺はドーマハルト号をチェックして出航の準備をするから小一時間、ひなたたちも暇を潰しておいで」
子供達を送り出すとタマモと飛行船へと移動していった。
「名古屋でお会いした時はすごく怖い人だなと思ってたんですけど。実は優しい方だったんですね」
喜多屋の言う名古屋であった時とはベルデの研究所を襲撃した時のことである。※空気を凍らせるほど冷血な表情でタマモと対峙していた、浮かれ顔でヤーシャの後を追う喜多屋に小声でひなたは
「もう!油断しちゃダメよ。よく警戒してついてきなさいよね」
「そうよひなたの言う通りよく観察するのよヤジロウ」
「アカネもひなたもそう言うけど悪い人に見えないんだけどな。アーロンもそう思わない」
「そうだよな、スタイルは抜群だし美人で少し危険な香りがするところがたまらないよな」
「そうだぜ、ひなたちも見習えよクールビューティってやつをな」
やれやれと言った顔つきのひなたたちであった。
緑の迷彩を施された紡錘形でジンベイザメのような機体に乗り込み操縦席を解説するヤーシャ
「この上陸用舟艇はパキラっていう名の船よ。天が開発した反重量エンジンで空を飛ぶ、同乗者の魔力量で性能が左右されるの、このゲージによると今はマックスパワーが出せるわ。貴方たちの魔力量がすごいというわけね」
興味津々で操縦席に座って喜多屋は
「僕にも運転できますか、ヤーシャさん」
「その操縦用のヘルメットを被ればブレインテックテクノロジーで思った通りに動かすことができるわ」
「すごいですね。天鼓さんってすごいんですね。こんな飛行機を簡単に作り出しちゃうなんて」
「そうよ天鼓様にかかれば不可能はないわ」
操縦席のコンソールが激しく点滅した。ヤーシャが通信機をオンにすると
「謎の飛行物体がこちら方面に飛行中です。識別信号が出ていませんので黄泉津軍の可能性があります」
「乗りかかった船、いや乗ってる船です。ヤーシャさん行ってもいいですか」
と喜多屋は言うとヘルメットを被ったのであった。
※☆ひなたの東海道中 エピソード『新ドーマハルト号』




