▽予言書の解析
ドレイクとひなたたちの戦いを喜多屋とアーロンは全く見ていなかった。それと言うのもリリからある指令を受けて行動していたからであった。外壁のわずかな突起に手や足をかけて二人でよじ登っていたのだ。先に登り終えたアーロンが手を伸ばして喜多屋を引っ張り上げると
「あの台座だな、俺が足枷を引き戻すから呪文を頼むぜ」
おそらくはドレイクがセットされていた箇所のことを言っているようであった。アーロンは渾身の力で閉じていた足枷を引き剥がしした。喜多屋は合図を待っていた。それはひなたが渾身の回し蹴りを決めた瞬間であった。
喜多屋は印を結び。
「オンキリキリバザラウンバッタ」
真言を唱えるとドレイクは引き寄せられるように台座に戻りガチャリと足枷がはまり石化して彫像となった。
「ナイス!ヤジロウ」
ひなたは親指をたて突き出した。しかし警戒アラートは鳴り止まないリリがコンソールで承認を受けるとやかましく鳴り続けた音が止まった。
「やれやれリリさんこれ以上何もないですよね」
「ジローちゃん心配しなくて大丈夫よ。天鼓様のところへ案内するので付いてきてください。あまりそこらのものを触らないでくださいね」
喜多屋はビクビクしながら前に進むのを見てリリが笑った。
「嘘よもう罠はないわよ」
ボンと背中を叩いていった。
「リリです、入ります天鼓様」
扉をノックして丁寧に挨拶をしたリリがメインの研究室へ入室した。
「お客さんを連れてきたみたいだね。珈琲を淹れてきてくれないかなリリ」
振り返りもせずにモニターを眺めキーボードを打ち込む天鼓、晴人が口を開く
「元気にしていたか。疲れているように見えるが晴明を使ってあれこれしているようだな」
「すっかり老けたようになっていますが元気ですよ。晴人さんも相変わらずお元気そうで何よりです。もう少し一区切り終わりますのでこのまま作業しながら失礼します」
天鼓も晴明と同じ歳であるもう三十前だ。その見た目は禿げ上がりシワも増え晴人と変わらぬ歳に見えなくもない。タマモはツカツカと周りこみ天鼓の顔を覗き込んで
「老けてるなんて気のせいよ。天ちゃんは見た目と精神年齢がリンクできているのよ。頼り甲斐があるように見えるわよねリリちゃん」
「タマモママもそう思う、渋いわよねテンテンは」
香りのいいコーヒーを配るリリは答えた。そして天鼓は勢いよくリターンキーを押すと振り向いた。穏やかな顔で軽く笑みを浮かべながら
「さて、お話を始めましょうか」
晴人は鋭い目つきで天鼓を睨んでいた。




