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▽夢のペット

 晴人と子供達はシーモフサルトの居城の門前で暇を持て余すかのようにいた。リリの準備が整うことを待っていたのだ。登山にあたって用意するものがあるからと晴人たちを待たせたのであった。

「もう!遅いねリリちゃん、そんなにいっぱい用意するものがあるのかしら?」

 ひなたは待つことが苦手な堪え性のない性格をしていた。しかしリリが用意した()()を見てすっかり機嫌は回復してテンションを爆上げしていた。

「お待たせ〜乗車用の神輿を装備していたの、歩いていくより便利でしょ」

 一同は驚いた。リリがゾウより何倍も大きな獣に乗って現れた。

 ひなたは開口一番「ベヒモスだ!!これに乗るの夢だったんだ」

「これってユートガルト・オンラインの移動アイテムじゃん、良かったねひなた大好きだったもんね」

 アカネが語っているのはゲームの話である。ロッソによって作られたそのゲームは異世界での戦いを想定した格闘ゲームの体験型チュートリアルになっていた。

「あら本当ね。私も好きよベヒモスは、でっかくて従順そうな性格で大きいからね。そうだ!ひなは小さい頃に犬を飼いたいと駄々を捏ねて困らせられたことがあったわよね、あなた」

「ああ、結局セントバーナードみたいな大型犬の背中に乗って幼稚園にいきたかっただけだったけどな」

「そうよ。ベヒちゃんは夢にまで見た理想のアイテムなのよ。リリ!早やく乗っけてよ」

 手を振るひなたはベヒモスをしげしげと羨望の眼差しで見つめた、象よりも大きく犀のようなごつごつとした皮膚からところどころマンモスのように生えるふさふさの毛に鋭い牙に長い鼻、象とは明らかに異なる生物であった。

 リリは神輿から梯子を下ろして晴人たちをベヒモスへと登場させたのであった。


「これは便利だ。助かるよリリ、でもベヒモスなんて初めて見たがどこにいたんだ」

「地底世界アガルタの奥地に生息している。これでも小さい方の個体だ。大きいやつは山が歩いているようになり使いずらい」

「ねえねえ名前はなんて言うの」

「ベヒスケだ。お前のこと気に入っているみたいだ。こっちへ来い」

 リリはひなたを自分の元へと呼ぶと手綱を持たせた。

「さあ操ってみるといい、真っ直ぐに道なりで行けば登山口だ」

 ベヒモスはゆっくりと重低音の足音をたて進み出した。

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