▽阿片窟
「何をグズグズしているんだよ。こっちはもう終わったぜ」
槌熊とオオガミたちは本陣を囲むように配備荒れていた鬼人兵をほんの数分で殲滅していた。
「槌熊、よく見なよ。どでかい結界が張られているじゃないか、俺が何とかしてやるか」
とオオガミは言うと天羽々斬を中段から剣先を向かって左側に開いて霞の構えを取った。スーと息を深く吸い込み
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・前・行」
九字を叫びながら突きを連続で放った。
分厚いガラスの砕けるような音と共に煙が吹き出してきた。
「阿片だ。輝也は下がっていろ」
鎮痛、陶酔といった作用があり、また多量の摂取では昏睡や呼吸抑制を引き起こす麻薬である。輝也以外には問題ないがかなりの量であった。
ささがにのくもよきたれいさうなしに
竜巻
晴明は煙をかき消すように術を放った。そこには裸体の人々が倒れ転がっていた。中心には水が満たされた大きな穴が空いていた。
「どこにいるんだ水戒鬼!」
叫ぶ晴明に大穴から触手が襲いかかってきた。素早く避け手刀で切り裂こうとしたがゴムのように弾かれた。そして本体が這い上がってきたのだ。
「こいつが水戒鬼?」
触手の長さが二メートルを超える大蛸が姿を現し大きな二つの目がこちらを見ていた。そして倒れていた女を掴むとその口が開いた。
「食事の邪魔をするとは無粋な襲撃者ね。名乗りなさい。いや名告る暇もなく消え去りなさい」
漏斗から真っ黒な墨を高圧力でレーザーのように吹き出した。周辺はズタズタに切り裂かれたが晴明たちは難なく避けて水戒鬼に攻撃を仕掛けたがオオガミの剣も槌熊の如意金箍棒も分厚いゴムのような表皮に弾かれてしまった。
「晴明、目と目の間の黄泉津虫だ」
オオガミの言った部分には黄泉津虫が取り憑いていた。




