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▽雨の会談

「今から行くのは賢明なことだとはいえませんな」

 ゴランは強く晴明たちに言った。

「どう言うことですか」

 晴明は雲から降りてゴランに言いよった。

「兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。故に、これを(はか)るに五事を以ってし、これを(くら)ぶるに、計を以ってして、その情を(そと)む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法」

「孫子がどうしたって言うんだよ」

 槌熊はゴランの語った孫子兵法を聞くとくるりと如意金箍棒(にょいきんこぼう)振り回した。

「天と地じゃよ。間も無く雨が降るじゃろう。水戒鬼(すいかいき)は水の隠形(おんぎょう)を使う(ゆえ)にあやつの術中に陥ることじゃろう」

 晴明は素早く()(はか)り天候を調べた。

「確かにこらから豪雨が昼まで続きますね。みなさん言われ通りに時を待ちましょう」

 ゴランは杖をつき一軒の廃墟にヨボヨボと入っていた。それを追うように晴明たちもその家に入った。


「何もおもてなしはできんがの。この老ぼれに何か聞きたいことがありそうじゃな。ほれそこに掛けなさい」

 部屋の中央の円卓の席を勧めてから自らも座った。

「ゴランさんはどうしてヘイ・オン・ワイを去ったんですか。記憶の継承もせずに」

 ゴランの一族は黄泉津(よもつ)によって代々記憶継承の(カルマ)を背負わされていたのであった。

「わしの記憶は黄泉津に伝わって予言書の(にえ)になるからじゃよ。天鼓の妨げにならぬようにヘイ・オン・ワイから去ったんじゃ」

 グリードがサグメから奪い取った黄泉津予言書、鬼人兵の指針書ことである。

「どうして私たちがここに来ることを知っていたんですか」

「順番はわからぬが鬼たちを追ってあなたがやってくると思っていました。お伝えしたいことがあります」

 オオガミを見つめた。雷が轟き激しい雨が降り出した。


「思ったよりも激しい雨ですな。この時期はこんな有様ですわ」

 屋根を打つ雨音が大きくなった。

「そんなことより俺に何を伝えたいいのだ」

 円卓の上の手を握りしめながらオオガミはゴランを睨み口をきっと結んだ。

三種の神器(みくさのかんだら)の刻印は取り戻されご記憶がお戻りになられたのではないですか」

「ああ、それが何だと」

「そのご記憶で卑弥呼様を探し出すのです。神々の降臨が起こる前に」

 晴明は輝也の方を向いた。

天の岩戸(あめのいわと)に行けと言うのか」

「ええ鬼たちを討ち取られたら天鼓の力を借りなさい」

 オオガミもまた新たな使命を与えられたのであった。

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