▽203高地
満州と呼ばれる地は中国の東北部分の一帯のことである。清王朝時代から栄えラストエンペラー溥儀が治めていた。ロシアとの国境地であり黄泉津軍にとってはアジア地区攻略のキーポイントとなっている。
カミーラに乗り込んで丸一日をかけここ旅順の港に停泊していた。水の中にいるカミーラはより一層ジンベエザメの姿を思い起こさせていた。晴明たちは街で休息をとっていた。街と言ったが見るからに廃墟状態で瓦礫を掻き分け食事を取る四人、グリードは船で待機している。晴明が持ってきていた食材で簡単なものであった。
「機内でグリードからレクチャーを受けたけどここから先の丘陵地帯に水戒鬼が陣を構えているんだけどオオガミさん作戦はある?」
晴明は飲み物を渡しながら聞いた。
「203高地だな見晴らしがいいので近づくのが厄介な場所だ」
「行ったことがあるんですか」
「日露戦争の時に攻撃部隊に加わっていた。突撃で多くの仲間が死んでいった全く馬鹿げた愚行だよ。敵は五十人ほどなんだろ正面突破で空から舞い降りればいいんじゃないか。槌熊運んでくれ」
日露戦争は、明治37年から一年にかけて日本とロシアの間で戦われた戦争である。
「人の觔斗雲をタクシーのように使うなよ。まあいいそれでいくかシンプルが一番だな」
水をぐいと一飲みすると立ち上がり觔斗雲を呼んだ。
「急かすなよ。晴明、輝也行くか」
揃って立ち上がると
「待ちなさい!」
突然呼び止める声がした。晴明は振り向きその声の主を見ると老人がいた。
「どなたですか・・・えっZさん」
ヘイ・オン・ワイの元総帥、ゼペット・ゴランがそこにいた。




