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●レジスタンス・グリーン&イエロー

 シーモフサルトの区割りの内、チダ区は城と軍事施設のみで住人は一人もいない。トウコ区にオオミドウとキグナスが担当した。

 この二人タイプは違うが実は大の仲良しであった。共通の趣味があった。フィギュアづくりであった。キグナスが造形してオオミドウが着色をする。二人でコツコツとタマモやモモ、イソルダ、アルジェなどを作ってフリーマーケットで売っているのだ。出来上がったものを二人で鑑賞しながら酒を呑んだりしていた。もちろん、ハルトや仲間たちには内緒の趣味である。こちらに来てからはさすがにその趣味も封印している。


「キグよ、この任務はちょっと荷が重いな」

「ミド氏、アーカムスさんみたいにカリスマ性があればいいだけど、僕たちは僕たちの方法で頑張るしかないね」

「閣下に言われた義賊(ぎぞく)活動に精を出すか」

 二人はトウコ区の卸売市場で働いていた。シーモフサルトが占領した北のバーチの国からの魚を国中に配送される市場だ。シーモフサルト唯一の食糧の供給場所だった。

 それから毎日のようにこの地区の魔族の家を襲撃して、レジスタンスカードを置いていく日々を過ごした。

 彼らの行動は自分で思っている以上有効であった。市場で働く人々はそれぞれに噂をして、配達に行った先ではその偉業をたたえていた。実は彼らがこの活動の起爆剤となっていたのである。


「おかしいと思わないかい。シーモフサルトの軍が侵攻の準備すらしていない」

「ミド氏、僕もそう思っていたんだ。何かを待っているのかな」

「ユートガルトの進軍をか、それはないだろう」

「でもそうとしか考えられない」

 二人の考えはユートガルトの兵士たちも思っていた。

「チダ区を探ってみようか」

「じゃあ今晩さっそく軍施設に潜り込んでみよう」


 オオミドウとキグナスは一番警備の多い施設にターゲットを絞った。こういった潜入に関してオオミドウの特殊なスキルが重宝するのだった。隠れ蓑笠(みのがさ)という気配を全く消し去り相手は見えているのにその存在に気が付かないまるで透明人間のようになるスキルだった。このスキルは同伴するものにも影響を与える。


 しばらく外で見張っていると奠胡(テンコ)がやってきた。

「ちょうどいい、奠胡の後をつければなにかわかるかもしれんな」

「ミド氏、頼んだよ」

 オオミドウは(いん)を結び「(りん)(ぴょう)(とう)(しゃ)(かい)(じん)(れっ)(さい)(ぜん)」と唱えた。

「キグ、肩から手を離すなよ」

 オオミドウは普通に歩き奠胡の後についていく、キグナスはびくびくしながら本当に見えていないのかと心配しながらキョロキョロとしている。

 大きな工場のような場所に来た。そこには大きな金属の筒が何本も立ち並んでいた。

「おい、工場長を呼べ!」

 ぞんざいな態度の奠胡がそこらにいた魔族に言いつける。

「奠胡様、これはわざわざお越しいただき何用でしょうか」

 もみ手で大きな魔族の工場長がおどおどと答えた。

「全然進んでおらんではないか!もっと急がんか!」

「エンドワースから金属が届かなくなって、どうにもこうにも製造が進まないもので」

「クッソ、忌々しいドーマハルトのせいで、ナガクに代わる鉱脈を探すんだ!早く」

 がみがみと怒鳴り散らして奠胡は帰っていった。


「キグ、あれはいったいどんな兵器なのだろう見当もつかん」

「ちゃんとこのQのガジェットに写しましたので諜報部と陛下に見ていただこう」

 それ以外これはといったものはなにもなかったので、二人は引き上げていった。


 ハルトはエンドワースのマナーコにいた。最期に奪いとった都市である。オオガミと話をしていた。

 ミス・ペティが報告にやってきた。

「閣下、各地区の報告をまとめたものです」

 いつものようにファイルを置いていくが

「何か特筆するような報告はあるか」

「はい、オオミドウとキグナスから送られてきた画像が分析したのですが何かわからないのですが」

 ムービーを壁に映し出した。

「これは、ミサイルじゃないか!なんでこんなものが・・・・」

 ハルトは絶句してしまった。この世界にそんな近代的な武器が異次元爆弾同様、ロストテクノロジーなのか。

「報告によるとナガクの鉱山からの資材が滞り製造が中断しているそうです」

 少しホッとしたがいずれにしろ材料がそろえば大変なことになる。

「オオガミ、オオミドウとキグナスに命じて破壊工作をさせよう。イソルダ、アルジェに爆弾を持たせてシーモフサルトへ送れ」

「かしこまりました。ところでこの武器は何なんでしょうか」

「これはミサイルと言って未来の兵器だ。爆弾を搭載して遠くの敵を倒す兵器だ」

「つまり、遠隔からユートガルトを狙う。それで進軍が止まっているということですか、直ちに手配します」


「あの画像の兵器の破壊命令が出たぞ」

「やはり危険なものだったんだな」

「爆弾を飛ばして遠くからユートガルトを爆撃する兵器なんだ」

 イソルダが二人に説明した。

「それはすごい武器だな。設計図が欲しいな」

 キグナスは興味を示したが

「それはだめです。ハルト様は兵器の存在がこれからの世のためにあってはならないとおっしゃられていました。完全破壊が命令です」

 アルジェが破壊用の時限爆弾を準備しながら答えた。

「今夜すぐに決行する。イソルダ、アルジェは俺と爆弾を設置に、キグナスは表で騒ぎを起こして注意をそらしてくれ」

「了解、気をつけてな」

 キグナスは部下を連れて現場に向かった。

「二人とも入り口を入るまでは隠れ蓑笠で一緒に爆弾セット後はそれぞれで脱出だ」

「かしこまりました」

 イソルダ、アルジェは頷いた。


 その夜、チダ区には大きな花火が打ちあがった。

 軍事施設を見渡せる建物の屋上にオオミドウたちはその光景を眺めていた。

「ミド氏、作戦成功ですな。これでしばらくやつらも後始末に追われるだろう」

「では明日はキグ、噂になっている地下アイドルを見に行くかブヤシ区へ」

「いいですね、ずっと気になっていたんです」

 何のことやらわからないイソルダ、アルジェは

「私たちはマナーコに今から戻ります。さようなら」

 というとさっさと引き上げていった。オオミドウとキグナスはしばらく花火を眺めていた。

「ミド氏のアイディアで花火を混ぜておいたが正解ですな」

「ああ、きれいだ」


 誘爆で次々と大輪の花火が夜空を彩っていた。

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