▽竜宮修行を披露する
研究所のダイニングは重苦しい空気が流れていた。
「フー師匠、稽古お願いします」
ひなたは立ち上がるとフー・スーに縋り付いてお願いをした。
「さすがひなた、こんな時にくじけちゃいけないそうだね。アオイもヤジロウも行くよ!」
子供達はトレーニングルームに我先に走って行き青龍のスーツにフォームチェンジをした。
早速稽古を始めたひなたにフー・スーはニコニコしながら受けて立っていた。一区切りつくと今度はアカネ、アオイと次々に組み手を始めた。
「次は僕だよ」
「ジロにゃん、戦闘は訓練したにゃ?」
「まあ見ててよ。いくよ!」
懐に手を入れると金剛杵である五鈷杵を三本、フー・スーの周りに打ち込んだ。両の手を操り印を結んで再び両手に握った金剛杵を打ち鳴らすとフースーに打ち込んだ五鈷杵が共鳴し始めた
「うばたまのやみをまとえし ときをあうとびらとなりし さるべきにや」
三つの五鈷杵はフー・スーの体を音波で金縛りに捉えた。そして何をするかと思いきや喜多屋はその体をくすぐり始めたのだ。
「ぎゃ!やめるにゃ、ジロにゃん!くすぐったいにゃ」
喘ぐようの笑い出していた。
「ま・ま・参ったにゃ・・・ジロにゃんの勝ちだにゃ・・ぜぃぜぃ」
「ヤジロウずるいぞ。そんなのなし」
「へっへん、平和的に解決しただけだよ。ひなたたちみたいに力づくじゃなくってね」
それを見ていた晴海は
「宝具を使いこなせるようになったんだ。面白いわね。姉ちゃんと手合わせしようか」
錫杖を取り出すと純白の戦闘服を召喚しチェンジしたのだ。
「ワオすげぇ、どうなってるの?」
「これは満腹寺の寺宝よ。行くわよジロー」
錫杖を振り回して喜多屋に迫っていくと両手に握った金剛杵で弾き応戦した。
「やるわねこれはどう」
後方に飛び下がると無数の火弾を打ち出したが喜多屋は呪符を放ち相殺した。
「合格よ。これならあの化け物じみた晴明の妹たちについていけそうね」
晴海はフー・スーとの組み手でひなたらの能力を化け物と評価していたのだった。
「おんや!このお坊ちゃんも水瀬家のお人でやんスカ?錫杖の持ち主になれるでやんすよ」
喜多屋の頭の上にバットリがバタバタと羽ばたいていた。
喜多屋は頭の上を払いながら「なんだこのコウモリは」
「あっしは錫杖の取説のバットリでやんす。お見知り置きを」
「そうなの!?じゃあ、たまには貸してあげるわよ」
「こんなおまけがついているなら遠慮しするよ。僕にはこの青龍スーツがあるからね」
「何言ってるのよ。この戦闘服はすごいのよ。えーと」
辺りを見回すとトレーニングルームの隅に置かれている鎧に目をつけた。
「あの鎧見てらっしゃい」というと
晴海は錫杖を振り回しながら小刻みにステップするとドンと床を叩いた錫杖を鎧に向け
「オン アキシュビヤ ウン」
大仏ほどの仏様が具現化すると両手を開き鎧をつかむかのようなしぐさをした。突然、両手が輝きだすと佛の顔が憤怒の形相に豹変し鎧を挟み込んだ。
「護摩浄化滅し退散!」
鎧を挟んだ両手が激しく燃え上がった。
「すげー!!僕にもできるのその戦闘服着れば」
そばで見ていたひなたは喜多屋が真っ白なウエディングドレスのような服を着た姿を想像してブッと吹き出した。
「笑うなよひなた」
ロッソが残念そうに
「あれは大百足素材の鎧だったんですけど簡単に粉砕されちゃいましたね。まだまだ改良の余地が必要ですね」
「フー師匠、もういっちょお願いします」
ひなたが申し出て晩御飯まで修行は続いたのであった。