▽祭事
「晴明先生、ユーダおじさんは本当に現れるかな」
見上げる空は雲ひとつないマナーコ城の見張り台では晴明とアーロンが待機していた。
「ユーダおじさんとヨシュアの中はどうして悪くなったかよければ理由を教えてもらえるかな」
しばらく沈黙が続いて
「父からは詳しくは話してもらえなかったけどユーダおじさんの奥さんのイーシャおばさんが母にいつも謝っていたよ。どうも叔父さんは国王になりたかったみたいなんだ」
イーシャはサマラの乳母であった関係で内情を打ち明けていたようであった。
「もう彼は死人だ。それでも君が戦う理由があるのか」
「父がドラゴニアに埋葬したいと望んでいる。だから僕が連れて帰るんだ」
表情を変えずに淡々と答えた。
状況は変わらぬまま日が落ちて祭りが粛々と始まろうとしていた。久遠は湖の外周にある隠しゲートから城へと戻ると槌熊を探して御柱の異変を報告した。
「なんだって!御柱の設置が変えられていただって」
「封印の逆転が起こるようなんだ。すぐに祭事を中止しないと大変なことになる」
「それは本当の話なんだろうな。しかし舞は始まっているしもう止められないぞ」
吐普加美依身多女の唱え言葉が聞こえてきた。祭事は始まってしまった。
澄み切った笛の音があたりに響き渡り五つの宮に奉納された御柱から真っ赤な光の柱が空に伸びた。湖の中止にある小島を中心に御柱から光の筋が重なり合い真っ赤な五芒星を描いた。
「綺麗だね晴明」
アーロンは思わずそう口を漏らした。話に聞いた通りそれは荘厳な光を纏った五芒星の封印であった。
「くそ!どうして予言書通りにならない。誰が邪魔をしたんだ!」
そう叫ぶサグメが突然舞い踊る巫女の中から現れた。舞姫たちに紛れ込み待機していたのだった。晴明は異変に気がつき見張り台から飛び降りていった。
「何者だ。お前が邪魔をしたんだな」
サグメの顔が醜く歪んで晴明を指差した。
「お前がサグメか私は晴明、倒させてもらうよ」
というや否やサグメに飛び込み手刀を胸板に突き立てたと同時に何者かもサグメに飛びついた。三人がもつれ合った状態になるとサグメが飛びついた男の首をもぎ取った。グリードであった。
転げ落ちる首が叫んだ。
「頼んだぞ、天鼓様の元へ」
首をちぎられた胴体がサグメから何かを盗み取り後方へ投げつけた。晴明も驚きその方向を見るとバスクルが走り込み巻物を掴むと猛スピードで走り去った。
「何をする!木戒鬼!追え!!」
上空から竜化した木戒鬼が飛来してきたがバスクルの姿は消えていた。




