▽七年祭
その結末に一抹の不安を感じながら晴明たちはマナーコの城へと戻ろうとしたが晴海は突然グイードの背中を掴むと
「出しなさいよ!チップを早く」
「どうしたんだ晴海そんな怖い顔をして」
久遠は晴海の行動に驚いていた。
「気がつかなかったのこいつがチップをあなたから奪い取ったのよ」
晴明も突然現れた天鼓の姿に気を取られて何事かと戸惑った表情で晴海を見た。
「どうしてグリードが盗んだとわかったんだ」
「まったく相変わらずのんびりしているわね。あの天鼓はこいつが投影したものだと気付かなかったの。さあ早くお出しなさいよ。どうしてこんなことしたの」
グリードはおとなしくチップの入ったケースをポケットから取り出したのだ。
「どうしてわかったんだ。上手く行ったと思ったんだけどな」
「当たり前よ。最初からあなたを疑っていたんだから、ちゃんと話してみなさい」
ケースをひったくるとグリードに詰め寄った。
「そいつはもう不要だ。既に転送済みだよ。ところでどうしてわかったんだ参考までに聞かせてくれないか」
グリードは見覚えのあるしたり顔で尋ねた。
「その顔、あなた天鼓のアバターなの?初めて会った時妙に生気が感じられなかったわけだわ」
「生気論ですか・・さすが女の感は侮れないですね。偽装のファクターとして見落としていました。おっしゃる通り私はテンミニ、この稷兎遺跡に十五年前から駐在している天鼓様のアバターです」
その告白には晴明も驚き
「天鼓はどこにいるんだ。サグメが現れた時にやってくるつもりなのか」
「さあそれはわかりません。晴明様がここに来られたということはその可能性は低いでしょう。あなたに期待しておりますでしょう。こんなところではなんですので城へ戻りましょう。あっ心配しないでください逃げも隠れもしませんから」
グリードは出口へと向かって行った。
「なんだって!こいつがテンミニだって、天鼓はどこまで用心深いんだ」
「槌熊、君まで現れるとは計算外だったよ。そうか式年造営御柱大祭を覚えていたのか」
城に戻り仲間たちと合流すると久遠によってグルードがテンミニであることを槌熊は知らされ驚いてはいたがその祭りについては覚えていなかったのか
「そうだそうだな祭りの年だったな」
「槌熊さん祭りってなんですか?」
久遠はメモ帳を取り出しながら尋ねた。
「この地では七年祭とも言われ俺が納める大昔前から行われている祭りだ。丑年と未年の数えで七年ごとに五本ある御柱の一本を建て替える行事さ。まあどんちゃん騒ぎの一つだと思ってたんだがな」
「へえ、神事なんですね。どう言った意味合いがあるですか?」
「知らんよ。昔からやっていたことで理由まで考えたことはなかったからな。呑んではしゃげるだけだ」
「この地に封じられた禍を治める為ですよ」
「輝也は知っているの」
晴海はカグヤに尋ねた。
「どんな禍かはわからないがそれが木戒鬼とサグメの目的だろう。それでいつなんだその祭事は」
晴明がつぶやいた。