▽晴美と晴明
「おう!ツキに晴海じゃないか。なんでいるんだ」
腰にタオルを巻き頭から湯気をあげた槌熊はまさかの再会に驚いていた。
「もっと驚くことがあるぜ。晴美と久遠さんの子供だよ。宙、おいらの父ちゃんだ」
ツキノワは宙を持ち上げると恐れもせずに手を振る幼子であった。久遠は槌熊の手を握り
「お久しぶりです。僕も驚きましたよ。まさかカグヤが男になっているなんて。ところで晴明くんは?」
槌熊はニヤリと笑って後ろのタトゥの少年を指さした。晴海は呆れた顔で
「晴明!まだそんなことをしているの、いい歳をしてどんなヒーローごっこのコスプレよ恥ずかしいわね」
「そんなことじゃないよ。彼は呪われてその姿になったんだ」
輝也は晴明の名誉のため弁解すると晴海は宙を抱き寄せて
「憑るんじゃないでしょうね」
「晴海、幸せそうだね。久遠さん良かったですね。ご結婚おめでとうございます」
笑顔の晴明はそう祝いの言葉を述べた。
「ごめんね晴明、その呪いは解けないのずっとその姿なの」
「いつでも解呪できると思うけど戦いの続く限りあえてこの姿でいようと思っている。でもどうしてマナーコにいるのかな」
久遠が答えた。
「訳あってZからの依頼でこれを運んできたんだ」
チップをつまんで晴明に見せた。
「それは?」
「稷兎遺跡にある天鼓くんの端末にデータをダウンロードするんだ。探索した世界各地のデータだそうだ」
晴明は「私も一緒に行ってもいいだろうか」
「もちろんだけどこの城の衛兵のグルードってやつに案内してもらうんだけど何処にいるのかな」
「?グルード、スノーに聞いてみるか」
スノーはシロクマの跡を継いだ城主である。槌熊は部屋を出ると城主の部屋に向かって行った。
「晴明くん、少し現況を教えてくれないか。他のみんなはどうしているのかな」
メモ帳を取り出す久遠に天鼓の異界獣騒動を説明してそれとは別に黄泉津軍という敵が現れたことを語った。
「そんな敵勢力が現れたのかさらに不安だな。そいつらの目的は天鼓君と同じなのかな」
「はっきりしたことはわからないけど天鼓とは敵対している。ここにきたのは黄泉津の放った五匹の鬼の木戒鬼と参謀のサグメがここに現れると卦の啓示があったんだ」
「そうなんだね。何か手伝えることがあるかな。晴海どうだろう」
「私は関係ないわ、宙もいるし厄介ごとはごめんよ。カグヤもごめんね。もう昔のように一緒に入れない」
「仕方ないよ。僕たちだけでやってみせるよ」輝也は言った。
ドアが開くと槌熊が一人の衛兵を連れて戻ってきた。




