▽宙の兄ちゃん
翌日ギルドで朝食を済ませた久遠家族はシロクマ城へと足を向けた。
「マナーコに何か用があるってZに言っていたがなんだ?」
久遠はそう聞くと晴海は遊環から戦闘鬼を呼び出した。
「もしかしたら槌熊が城に戻ってきているんじゃないかと思っているのツキノワはどう思う」
ツキノワは槌熊が城主を務めていた期間この城で生活していた。
「天鼓やヤーシャとは一緒にいないと思うな勝手な人だから、ここは居心地がいいからもしかしたらいるかもよ。でもどうして父ちゃんに逢いたいんだ」
「情報収集よ。決まってるじゃない。操作の基本よ、ねえ久太郎」
「彼らはラルヴァンダードで失踪してからどうしているか何も掴めていないがせっかく異世界に戻ってきたんだ。彼らを探し出すことで新たな展開に進めそうだね晴海」
「ママすごい!名探偵だ」
「半年ぶりにお呼び出しだ。宙も久しぶりだな後でまた剣術の稽古しようぜ」
「うん、ツキノワの兄ちゃん」
宙にとってツキノワはいろいろなことが学べるいい兄貴分であった。
「ツキノワ、お城についてきてくれる。衛兵のグルードに遺跡まで案内してもらうの」
「グルード?そんな兵いたっけ?」
「新しい人でしょヘイ・オン・ワイが潜入させているのかもよ」
「じゃさっそく行くか」
宙を肩車すると走って行った。
「おーい!ツキノワ様だぞ!城門を開けろ」
「開けろ!!」
どんどんと叩くと宙も一緒に叫んでいた。門が開き古参の衛兵が
「坊ちゃんお久しぶりでお父様について来られたのですか」
「!父ちゃんがいるのか、晴海ビンゴだぜ。話に行こうぜ」
城内に入ると衛兵に聞いた槌熊のいる部屋へと向かった。
部屋にはまず久遠がノックをして入るがアーロンと輝也しかいなかった。
「あれ部屋を間違えたか。済みませんでした」
そのまま扉を閉めようとすると
「待ってください!久遠さんじゃないですか」
「あなたは?」
「輝也ですよ」
久遠はその端正な顔立ちにカグヤの面影を見出した。
「そう言われれば、男装でもしているのか」
「いや男してクローニングされたんだ。それより君はどうしてシロクマ城にいるんだよ」
「それはこっちの聞きたいことだよ。おーい晴海」
表で宙と話している晴美を呼んだ。宙と手を繋いで部屋に入ると
「ママって晴海のことか・・・」
「あんた晴海って気軽に呼ぶなんて生意気そうなガキね」
「いや違うんだ彼はカグヤだよ。よく見てごらん」
カグヤと聞き体に震えが走った。すぐさま地底都市グシュナサフで自分の命を救う代わりに消滅した彼女を思い出していた。
「あなた本当にカグヤなの」
「前の体は君の一部だよ。驚いたよ、その子は息子だね」
晴海は輝也に抱きついていた。少し目を潤ませ
「どうしてすぐに連絡くれなかったのよ。ありがとう助けてくれて、やっと十五年ぶりに礼が言えたわ」
「そんなに覚えていてくれてこちらこそありがとう。君に逢いたかったよ。でもどうして」
その答えと理由は久遠がかい摘んで説明をした。
「そうだったのか。実は晴明もいるんだ。槌熊と風呂へ行っている」
晴海は平然と
「やっぱりあいつもいるの、まだ正義のヒーロー気取っているんだ。成長しないわね。でそこの緑色の子は?」
「ヨシュアとサマラの息子だよ」
「あらその顔サマラに少し似てるわね。それに尻尾」
「あんたもパパやママの知り合いか、アーロンだ」
「なんだか偉そうね。まあいいは晴海よ。サマラとは仲良しだったのよ」
「アーロンに見せた櫛を彼女も持っているんだ。ちゃんと挨拶しろよ。それと久遠さんにツキノワ、槌熊の息子だ」
輝也に言われアーロンは直立し大きくお辞儀をすると
「ドラゴニアの王子、アーロンです。よろしくお願いします」
と言ったところで槌熊と晴明が戻ってきたのであった。




