▽家族でクエスト開始
「差し支えなければこのチップの内容を教えてもらえませんか」
久遠は今の天鼓が異世界獣を送り込み世界に混乱を招いたことは知っていた。
「あなたもエイジェントの一人です。よろしいでしょう。我らヘイ・オン・ワイは天鼓様の指令によりあなた方の世界のG20と呼ばれる国々にエイジェントを送り込みこの十五年間その国の情勢を具に記録して報告してまいりました。その最新情報です」
「ママ、G20って何?」
「パパに聞きなさい」
「世界の経済的に偉い国々のことだよ。もちろん日本もそうだよ。で日本はどうなっているんですか。アメリカでは暴動が起こって大変だったんですよ。それを異界獣獣が制圧してしまいましたけど」
アメリカに住む久遠夫婦は日本でも同じことが起こっているのではないかと心配しそして無謀な航海を選択したのであったのだが、Zの語る現状に何度も頷きながら聴いているうちに
「そうですか、宝蔵院グループがそんな支援をしているんですね。安心しました」
巨大企業宝蔵院グループが日本のインフラを支え人々の支援と復興を進んで実行している現状に安堵を覚えていた。
「天鼓が助けている訳なの日本を」
「晴海さん、今の宝蔵院グループは天鼓様のアバターのテンミニと呼ばれていたAIが三体、ロッソ、ベルデ、ブルたちが天鼓様とは独立して運営されていますがお考えはその意に従っているように思われます」
久遠と晴海が知っていたテンミニは小さな存在であったが今や世界を救う救世主として君臨していた。
「急いで帰る必要もないな。クエストを受けさせてもらうが遺跡までどうやっていけばいいのかな」
「それはこちらで車をご用意しましょう」
「車?それは魔石で動くあのバスみたいなものですか」
「そうです小型化して色々と装備を備えた特殊仕様ですよ」
久遠はなぜかボンドカーのようなものを妄想していた。
「それは武器とか特殊な攻撃ができるスパイ装備が備わっているのですか」
「付いてきてくださいお見せしましょう。原案は初代当主のスケッチから作られています」
格納庫へ案内されると古めかしい型のクラシックカーがそこに鎮座していた。
「かっこいいねパパ、これでドライブするのわーいわーい!」
宙ははしゃいでいたが久遠と晴海はやれやれと言った表情でそのオンボロ車を眺めていたのであった。




