△敵襲
晴明とアカネは外へ出ると秋晴れの心地よい風が二人の髪をすくった。アカネは髪を整えると上目がちに晴明を見つめていた。視線に気づき晴明は
「修行は辛くなかったかい。三年間だったよね、こっちじゃ三日だ、まだ10月に入ったところだけどよく頑張ったよ。ひなたは迷惑かけなかったかな」
「えっそうなの!もう10月になっていたんだ。エンドクエイクからまだ二週間ちょっとしか経ってないんだね。すっかり忘れてたよ。晴兄はその姿はなんともないの」
「呪詛のことかそうだなぁ・・・急いで解呪しないとけないとタイプのものではないし、むしろ今のこの体の方が戦いに向いているとさえ思っているんだ」
神獣朱雀の体は常人では成し得ない身体能力をもち備えている。
「僕は早く大人の晴兄に会いたいな。でも今の晴兄も素敵だけど」
晴明に憧れるアカネには二人きりのこの時間が至福の時であった。
「今からピコーナに戻るからしっかり首に捕まっているんだよ」
うっすらと輝くと神獣ピコーナの姿となった。
「アカネ、最高速で飛ぶから目を回さないように具合が悪くなったらタップして知らせるんだピコ」
「平気平気、でもこんな薄着じゃ寒いかな」
「それは問題ないピコ、結界を張っていて音速でも快適だから」
そう告げると背中にアカネを乗せ飛び立って行った。
「にゃ!ひなたとアオイがペアで異世界獣と戦うにゃ」
研究所特製のVRゴーグルと計測スーツを着込んだ二人はヴァーチャルトレーニングルームでフー・スーの前で修行成果の披露を行った。トレーニングルームは高速道路のステージを投影した。
「これってもしかしてあの性格の悪いドラゴノイドが出てくるのかな」
「そのようですわ。追体験させるようですね」
目の前に異界獣ディアマンティスが五体にベアビートル八体が現れ二人に襲いかかってきた。
「ひなたは右から私はこっち」
アーミーナイフを持つアオイは左に跳びディアマンティスの首を立て続けに二つ落としした。ひなたは手刀で一匹を沈黙させくるりと回転すると正拳突きで残りの二匹目掛けて吹き飛ばして圧死させた。アオイとハイタッチをするとベアビートルと向かい合った。
「こいつはぶち抜くと手が汚れるからアオイに任せるよ」
素早く敵の懐に潜り込むひなた、足を掴んでは次々とアオイに向かって腹の急所が見えるように投げるとアオイは呪文で氷槍で串刺しにして行った。
「グッジョブ!アオイ、一面クリアだ」
「次は数が多いですわよ。オーガとゴブリンが三十体よ」
「十五体ずつね」
と言うと飛び蹴りで一体目の頭部を破壊するとその勢いのままピンボールのように次々と蹴り倒して行った。アオイは 加速を繰り返し残像で分身を作り魔人たちを翻弄し背後に周り
「標的」
オーガやゴブリンたちの額に魔法陣が浮かぶ。
「水球弾」
呪文の銃弾でひたいを撃ち抜いて倒した。
「次の中ボスはボク一人で行くよ」
斧を構えた冥界クインテット、バグログが現れるとひなたは手を合わせて目を閉じて気を貯めた。
「獣王百裂波!!!」
無数の正拳突きで上半身を吹っ飛ばしてしまった。
「あっちゃーやりすぎたかな。でも大ボスだ」
左手には白虎鉄貫を装備したが突然VRゴーグルを投げ捨てて
「ロッソ!止めて!何かが来るよ」
トレーニングルームを飛び出すとテラスに飛び出して行った。
「どうしたんですかひなたさん」
わけもわからず困惑するロッソだがフー・スーは
「地下から敵が来るにゃみんな警戒だにゃ」
晴人も「黄泉津の手のものの気配だ。晴明のいないこんな時にまったく、槌熊、オオガミ出るぞ!」
三人で研究所の表へと飛び出して行った。