△修行の成果
晴人が表に出て裏山の中腹あたりを見つめている。
「何が出てくるやら、オオガミ新月を過ぎたところだが戦えるよな。これを使え」
研究所から持ち出した。長刀を渡した。
「任せておけ、しかしこれは晴明のクラウドソードじゃないか」
「何を考えているやらこれからは刀に頼らず戦いたいんだとよ」
地響きのような音がしたかと思うと山が揺れた。
「この気配は黄泉津の兵のものに似ているな。ジローは」
青龍からプレゼントされた戦闘服に身を包む喜多屋が
「槌熊さん、遅くなりました。どうすればいいでしょうか」
「任せるぜ。修行の成果とやらを見せてくれ」
頷く喜多屋はヴァイオリンを弾き始めたのだった。勇壮なメロディを奏で始めると槌熊ら三人に防御の加護がエンチャントされ戦闘力もメロディーと共に増加して行った。
山腹から飛び出してきたのは大きな昆虫の頭部だった。先頭で剣を構えるオオガミにズルズルと向かって伸びてきた。
「大百足だ!!」
オオガミは飛び上がると同時にその頭に剣を振り抜いた。大百足は勢いを止めずにオオガミの立っていた場所の地面を抉り取った。体の後方の部分は山からまだ出ていない。その体長は三十メートルをも超えると思われた。
オオガミはそのまま背中に張り付いて刀を突き立てるが傷一つつけることができない。
「オオガミ!退け!呪文を打ち込むぞ」
晴人は印を結ぶと詠唱を始めた。
かやりびのこそもえわたりけれくゆらん
強炎
その十字に結ばれた両腕からは轟音と共に高温の炎が吹き出した。晴人に向かって勢いを止めず突っ込んでくる大ムカデの頭部に直撃したかのように見えたが青黒い表皮は鏡のように跳ね返したのだった。晴人は今度は
あまびこのおとをまゐらすわりなしのさがなしものにさながらうす
雷撃
雷の矢を打ち込むが先程の炎と同じく青黒い表皮に弾かれてしまいオオガミの横をすり抜けて行った。
「悪い、オオガミ、こいつには対呪のコーティングがあるようだ。打撃でなんとかするしかない槌熊頼む」
言われた槌熊は耳の穴をほじくると如意金箍棒を取り出し晴人と大百足の間に割って入ると喜多屋の演奏が槌熊のメロディーにチェンジした。筋肉がビルドアップしていくと数トンの重さの如意棒を思いっきりムカデ頭にぶち込んだ。
「ダメだぜ、びくともしない」
大百足は大きく首を後方に弾かれたがほぼ無傷な状態であった。
「みなさん!僕たちでなんとかしてみます。後方へお願いします」
喜多屋は大きな声で言うとアカネを除いた戦闘服とヘルメット被った四人がヨーロッパの古城をリフォームした研
のベランダにずらりと並んでいた。




