△酔夢閃光斬
トレーニングルームを眺め見る観覧席にはビールを飲むオオガミと槌熊がどっかりと座り晴明とアーロンの様子を一等席で伺っていた。晴明はアーロンに手をかざし沐浴(回復呪文)を施していた。
「これを飲むんだ。ロッソが配合したエリクサーだよ。不足しているHPとMPを回復しなさい」
黄金色の液体の入った小瓶を渡すとアーロンは一気に飲み干したが何かおかしい。ゆらゆらとふらつき出したのだった。
「おいおい、大丈夫か」
差し出す手を振り払い「とっととおぱじめようぜ」
アーロンは手に持つ槍を晴明目掛けて突き放った。その勢いとスピードに晴明もエンジンがかかる。
「いい突きだ。私も槍で付き合うか」
そばにあった棒を掴み向き合った。アーロンといえばふらふらと踊るように片手で槍を操り始め時折晴明をついてくる。それを払い除けるとくるりと槍を振り回して別の方向から襲ってきた。
「酔槍術って感じだな。面白い」
晴明もその動きを真似てのらりくらりと動きを合わしていた。
「あいつら何をやってるんだ」
「面白れいじゃないかよ。あの坊主の動きが晴明を翻弄しているぜ」
「確かにアーロンの野郎、どうしやがったんだ、やればできるじゃないか」
くるっと回転した晴明の棒がアーロンの額に向け放たれ突き刺さったのかのように見えた。槌熊から感嘆の声が漏れたが、体を後ろにそらしその攻撃を避けていた。そしてその目には晴明の姿が見えない状態から曲芸のように閃光の突きが放たれた。今度はオオガミの声が漏れる。
その槍は晴明の喉笛を突き抜いた。が残像を残し晴明はアーロンの後ろに移動していた。
「驚いたアーロンそれが無想閃光斬だよ」
と声をかけたがアーロンは前のめりにばたりと倒れイビキを掻き出してしまった。その姿を見て驚いたオオガミと槌熊はトレーニング場に降りてきたのだ。
「なんだか酔っ払って眠ちまったようだな」
「そんなアルコールなんて飲ませてないよ、このエリクサーだけだよ」
瓶に残った液体を舐めて確認した。ロッソもやってくると検査機器をアーロンに向け調べ出した。
「泥酔状態のようですね。さてなぜだろう。アルコールなんて精製の時に少量使用しただけなんですが!!これは・・・」
分析結果がモニターに表示されたのだ。
「アマテラス粒子が呼気から検出されています。このエリクサーの基本成分は霊薬から構成されています。アマテラス粒子の凝縮水なんです。それがドラゴノイドにはアルコールと同じように作用しているにでしょうかね」
「部屋に連れて行って詳しく調べてもらうか」
槌熊はアーロンをひょいと肩に担いで検査室へと連れて行った。




