△黄泉津兵の秘密
見張りの兵の報告に大広間のバルコニーへと飛び出すヨシュア、それに続きひなた達も部屋を出た。そしてヨシュアの開口一番に
「皆のもの心配するではないぞ!宴会を続けるぞ」
ヨシュアもかつて搭乗した懐かしい機体が見えていた。
「ドーマハルト号だよ!パパ達だ」
ひなたは歓喜の声をあげたがアカネは
「どうしようひなた、旦那様はカンカンだと思うよ」
「黙って出てきて心配してると思いますよ」
「アオイ、僕がそそのかしたって代わりに謝ってあげるから心配ないよ」
喜多屋はみんなをかばうかのように男息を見せたようだったが輝也に小さな声で
「全部責任は槌熊に押し付けちゃえばいいさ」
「聞こえてるよヤジロウ、ボクが謝るから槌熊さんに押し付けちゃダメ、パパなんてボクがちょっと涙を見せればイチコロなんだから」
ヨシュアと並んで飛行船を見つめていた晴明は振り向くと
「なんだひなたそうなのか親父達に黙って勝手にこんなところまで来たのかダメだぞ心配させちゃ」
輝也はひなたを叱る晴明の肩に手をおくと
「僕のせいなんだ。この子達を責めないでくれ、早くドラゴニアに来たかったんだ。黄泉津の手がこの街へと伸びている恐れがあったんだ」
「そんな情報を持っていたならもっと早く教えて欲しかったよ。どうして黄泉津はドラゴノイドを狙ったんだ」
「兵士を集めるためだ。黄泉津にはこの時代に仲間がいない、そう考えると戦闘能力の高い竜族を仲間にするしかないんだ」
「しかし五星戒がいるじゃないか、それにあの鬼人たちが」
「晴明も見ただろその兵士たちの正体、寄生虫に操られた操り人形だ。おそらくあの不偸の木戒鬼も同じだろう」
ドラゴニアを襲った兵士たちを輝也はそう分析したのだった。
ドーマハルト号は宮殿の庭に着陸すると晴人らが下船してこちらに向かってくるのが見えた。
「晴人、すごいねこの宮殿、新婚旅行でスペインに行った時のガウガウのサラダファミリーみたいね」
「ガウディのサグラダファミリアだろ。あの時のヨーロッパ旅行は今にして思えばユートガルトで暮らしたデジャブ感があるな。記憶がないのに既視感と言うのはおかしいか」
「豪邸住まいだなヨシュアの坊ちゃんはリサたん美味しいものが食えるぞ」
「それはどうかな。ドラゴノイドの食事はすごいぞ」
晴人は初めてドラゴノイドの宴席でのことを思い出していた。あの時はオーディンの馬に憑依をしていて味覚を感じることもなく無事過ごせたが今は生身である。勘弁してもらいたい体験だった。
ドラゴノイド兵のイーシャが出迎えに現れ宮殿に招き入れていった。
「晴人よく来たな。ちょうど晴明達の歓迎の宴の真最中だ。お腹が減っているだろ」
ヨシュアは晴人に話しかけたが真っ先に槌熊に向かっていくと胸ぐらを掴み
「あんたが子供達をそそのかしてこんなところまで連れてきたんだろ。どう言うわけだ!」
飛んできたひなたが晴人に抱きつくと
「パパ、怒っちゃダメ、ひなたが悪いの槌熊のおじさんは関係ないの」
晴人は顔を真っ赤に憤慨した顔から豹変して優しげな顔になって
「ひなた、何もなかったか大丈夫か」
「親父、この子達を叱らないでくれよ」
「お、お前!どうしたんだその姿は」
晴人は晴明を見ると今までの勢いもなんのそのその変貌ぶりに驚いていた。
「晴ちゃん!どうしちゃったのとっても可愛くなって、母さん気に入ったわ」
と言うと晴明を抱き上げていた。
「黄泉津の鬼、五星戒の木戒鬼に呪詛をかけられた」
晴人はタマモに抱かれた晴明を引き剥がして
「油断したなまだまだ甘いな。見たところピコーナとメダルの体だな。本体はどこだ」
晴明はアイテムボックスから真っ赤な繭を取り出した。
「親父の言う通りだ。この繭の中にいる」
「これは厄介な呪いだな。俺にもどうすることもできなそうだ。術者を倒しても解呪には特別な方法が必要だろう」
さすが晴人であった。すぐさま呪詛の特性を読み解いていた。
「そうか!そうだ!首のない敵がここへきただろ」
「晴人は何か知っているのか。説明してくれ」
「ヨシュア、俺にもわからんが晴明説明してくれその敵を」
宴席から晴人と晴明は別の部屋へと向かっていった。
「よかったな、ひなた怒られなくて」
「ヤジロウ、それより料理の続き食べようぜ。ママ美味しいよ」
タマモはひなたの目線にかがむと
「パパの代わりに私が叱ってやるからそれからよお食事は」
結局は注意を受けることになったひなた達であった。