△軽足と鬼無瀬
ヘミングは自分の街に起こっている重大な有事に踊らされることなく平静そのものであった。その姿を見る晴人は幼い頃の祖父を見る思いであった。
「じいちゃんは相変わらずあわてないんだね。僕が泣いて帰ってきたときみたいだ」
「まあ、泣いている晴人可愛い、私に甘えて泣いてみて」
「バカ、普通にいつも甘えてるじゃないかよ」
「おいおい、リサたんも当てられるなよ。いつものじゃれあいだからな」
「本当ご夫婦の仲の良さがうらやましいです。八雲先生の意外な一面ですね」
鬼無瀬は学園では晴人から陰陽道の授業を受けていたがその時の様子と比べあまりの違いに微笑んでいた。そんな軽足と鬼無瀬は晴人たちの少し後ろを付いていっていた。
「ところでよ。あんましゆっくりリサたんとゆっくり話せていなかったな。おいらはリサたんの部隊の先輩なんだよ。御堂を鍛えたりしていたんだ」
鬼無瀬はぴたりと立ち止まり敬礼をして
「それはちゃんとしたご挨拶もせずに申し訳ありませんでした。鬼無瀬1等陸佐、情報保全隊呪術班所属よろしく願います」
「まあそんな堅苦しくしなくてもいいぜ。気楽にしてくれただの老いぼれさ。リサたんは隊にいい人がいるのか」
さすが昭和世代の軽足だ、コンプライサンスもクソもない。ずけずけと聞いていた。
「ええ、そんな今は任務で精一杯です。ところで軽足さんは今はどうなさっているんです」
「リタイア組だな。任務で東の国へ行ってリサたんみたいな。とびきり美人のサーカス団員の女房の尻に惹かれて除隊した後は教団と一悶着していただけさ」
「色々となさっていたんですね。それで団長さんと呼ばれていているんですね」
「みたところ晴人を気に入っているようだがどうだい晴明なんていい男がいるだろう」
鬼無瀬はどきりとした表情を浮かべ顔を赤くしていた。
「ドンピッシャってところか。いい男だぞ俺が仲立ちしてやろうか」
「いえそれは・・・」
「悪い悪い気にするな。ただに愛の二人だなと思っただけさ。おっとヘミングの家に着いたみたいだな」
大型の屋敷が眼前にそびえていた。
「さあ入ってくれ腹は減ってないか、飯の用意をしてやる」
ヘミングは晴人たちを屋敷に招き入れたのであった。




