△敵兵の異変
「ちょっと待ってくれ、敵の死体がおかしいぞ」
輝也が戻ろうとしている晴明を呼び止めた。
「どうかした?」
「いやよく見てくれ頭部を攻撃され倒された敵以外の頭がないんだ」
改めて倒されドラゴノイド兵によって片付けられていた死体を見ると輝也のいう通りであった。
「あっ!あそこ見て蜘蛛みたいな生き物が逃げていっているよ」
ひなたの言う方向を見ると確かに何体もの生き物が蠢いていた。その一匹をドラゴノイド兵が槍で突き刺してこちらに持ち帰ると
「あ、頭じゃないか」
鬼兵士の頭だがちぎれたの首から足のようなものが八本突き出し頭部のみで移動していたのだ。
輝也はそれを槍ごと受け取り動かなくなったその物体を観察し始めた。
「こいつが本体だったのか、蜘蛛か・・確かに鋏角類の特徴を備えて脊髄の部分が前体でこいつで体にしがみついていたようだな」
アオイも木の枝で突きながら分析をしていた。
「うぇアオイよくこんなもの触れるな。ボクは絶対無理」
「ひなたも晴兄も蜘蛛大嫌いだもんね」
アカネは晴明にさっそく寄り添い腕をからませいたずら顔でひなたの方を向きそう言った。晴明も顔を逸らしたまま
「ヨシュア、兵に命じて残りの頭も潰しておいた方がいいぞ」
「それもそうだな。アーロンよ、行ってこい」
「はい、ご命令のまま、お前とお前ついてこい」
「こらっアーロン、ちゃんと名前で呼びなさい。そんなことだから信望が集まらんのだぞ」
ヨシュアはやれやれと言った顔つきになっていた。
「ふっ、子育て大変そうだな」
晴明は笑いながらヨシュアに言うと
「あの子はドラゴノイドの中で男と女から最初に生まれたファーストチルドレンだからな甘やかせて育てすぎたよ」
ヨシュアは照れながら晴明に愚痴を述べた。
「ねえねえ晴兄、男と女から最初に生まれたってどう言うことなの」
「ひなたドラゴノイドには大変な歴史があるんだ。男族のドラゴノイドと女族はすごい長い間、別々に生活していたんだ。それが兄さんがここにいた頃、ヨシュアとサマラが初めて出会い恋に落ちてアーロンが生まれたってことさ」
「へえ、晴兄が恋のキューピットってわけなの自分はぜんぜんダメなのに」
「こら!そんなことを言うんじゃないよ。兄ちゃんはに兄ちゃんの道だぞ」
「はいはい、負け惜しみにしか聞こえないよ。小さい晴兄」
姉弟の立場の目線でひなたは答えた。