〇御朱印
朝ごはんを済ませテントを片付け探索の開始だ。
「父、こっちの方に何か力を感じるよ」
古墳の方へピコーナが向かっている。中に入れそうな穴を見つけたようだ。このところの雨のせいで古墳の一部が崩れたのだろう。
「墓あらしはだめだよピコーナ」
それでも中にどんどん踏み入っていくと石棺が安置されていた。ピコーナが開けると印鑑だけが中にはあった。
「これなんだろうね?ピコーナ」
「父、これは御宝印だよ。閻魔大王さまの持ち物じゃないかな」
「なんでこんなものがこんなところにドーマさんに聞いてみよう」
古墳を出るとタマモが騒いでいる。
「こっちに必ずいるよ。そんな気がするの!」
「やみくもに行動しても無駄だろう」
タマモとオオガミが言い争っていた。
「二人とも落ち着いてよ。二手に分かれて探せばいいじゃない」
「ハルちゃんの言う通りよ。オオガミは好きなとこ探したら、私はハルちゃんと行くから」
と言ってまた自分勝手にどんどん進んでいった。
「法師様、何とかいってやってください」
「まあオオガミ、あやつの感もたまには当たることもある。ついて行ってやろうぞ」
ドーマはタウロの車に乗りタマモの方へと進んでいった。
「俺は一人で探してやる。俺の感もあいつより優れているからな」
オオガミは別の方へと歩んでいった。どうして仲良くできないかな困った人たちだ。
わがまま娘に厳しい叔父さんといったところだろうか。悪いのは甘やかしたドーマさんってとこか。僕がフォローするお兄ちゃんって役を演じるか。
「タマモさーん、待ってよ」
結局タマモには僕とピコーナ、ドーマ、タウロのチーム、オオガミは茜、葵とわかれ迦樓夜叉を探しに動いた。
「あっ、そうだドーマさん、こんなものピコーナが見つけたんだけど何かな」
御宝印をドーマに見せた。
「これは徳道上人が閻魔大王から授かった御宝印かもしれんの。あとで中山寺に奉納しておこう。その前に御朱印の札を作っておくがよい。冥界に行く時に役に立つやもしれん」
そんな由緒のあるハンコなのかハルアキは懐にしまった。
「ピコッ!」
ピコーナが何かを探知した。
「父、あそこ!」
ピコーナの指さす先に廃寺からサテュロスが死体を担ぎ出てくるが見えた。
「加速」
天叢雲剣をサテュロスの喉笛に突き立てた。
「迦樓夜叉はこの中か!答えろ!」
サテュロスの額から汗が流れる。ところがそんな問答も無視するようにタマモが廃寺を壊し始めた。すさまじいサイコキネシスで半分くらいを破壊してしまった。僕が気をとられている隙にサテュロスは死体を投げ捨て逃げてしまった。
「しまった、また逃げられた。まったくタマモさんは」
ドーマも牛車からひらりと飛びだした。タウロは指輪を金棒に変えて構えた。
「まったくノックくらいしなさいよ。しつけのなってないキツネ娘ね」
扇子を仰ぎながら迦樓夜叉が崩れた寺から現れた。
「あら、このくらいのノックで潰れちゃう所にいるあんたが悪いのよ」
タマモも言い返した。
きっとにらむ迦樓夜叉、この前のように片手の爪、五本をこちらに飛ばしてきた。
タマモは軽々とよけ詰め寄った。
扇子を大鎌に変化させタマモに振りかかる。
「危ない!加速」
ガッキッ!
天叢雲剣で受ける。迦樓夜叉はうしろに飛び退いた。
「あら、坊やこの前よりちょっとはやるようになってるわね」にやりと笑う。
「私のハルちゃんを甘く見ないほうがいいわよ」
「父、危ない!」
迦樓夜叉の爪がケルベロスとなりハルアキの背後に飛びかかる。ピコーナは飛翔態へと変化し
「ピコーナドリルアタック!!」回転しながらケルベロスを突き抜いた。
「ありがとうピコーナすごいね。必殺技のネーミングもグッドだよ」
「標的」残り四体のケルベロスたちの額に魔法陣が浮かぶ。「水球弾」小さな水滴を高速で眉間を連続で貫く魔法力の上がったハルアキの水球弾はこの前の比ではなかった。十二発の弾はケルベロスの頭を吹き飛ばしていた。
「くそ!サテュロスはどこだ、サテュロス!!」
「ふふっ、あんたも人望ないね。とっく逃げちゃったわよ」
歯ぎしりをしている。そして鎌を振り上げ襲ってきた。
剣を交えるがすでに見切っている。オオガミとのトレーニングで対策済みだ。
「今だ!」先の見切り」
懐に飛び込み力いっぱい剣を振るい迦樓夜叉の胴体を裁断した。
切断された上半身が地面に落ちるのを見て一瞬の油断生じた。迦樓夜叉の下半身は液状化しハルアキをとらえてしまった。
迦樓夜叉の上半身は背中の翼で飛び上がる。手にはエネルギーの塊が見える。この前のあれだ。
「うちのハルちゃんに手を出すな!!」
タマモの両手から火炎球が出でて迦樓夜叉に襲い掛かった。
「ぐぁぁぁっ!」
ぽとりと地面に落ちていった。
僕は迦樓夜叉の下半身を振りほどいた。
「危なかった。タマモさんありがとう」
「よかったハルちゃん」
涙を流しながら抱き着いて来た。
「油断をするな、ハルアキ!」
ドーマが叫ぶ。
液状化した下半身は蝙蝠へと姿を変えて、消し炭のようになった上半身をつかみ飛び立っていった。
「逃げられちゃったね。タマモさん」
「次はやっつけようねハルちゃん」
僕の頭をなでながらタマモがつぶやいた。
オオガミたちが駆けつけてきた。
「サテュロスが必死の形相で逃げてきたのでこちらへ向かいましたが遅かったですね。すみません」
葵が頭を下げた。
「タマモ悪かったな。おまえの勝ちだ」
オオガミは頭をかいてタマモに謝った。タマモはしたり顔で
「見なさいよ。オオガミもっと修業しなさい」
「ふほほっほ、やられただなオオガミの旦那」
タウロも笑った。
「では京に戻ろうか」
ドーマが言った。
「ちょっと待って」
僕の感が告げた。
「このあたり温泉があるはずだよ。浸かっていこうよ」
みんなが笑った。




