△呪い
ひなたは鬼も群れたちの中へ飛び込んでいく、アカネとアオイも続いていた。
しばらく時を遡る。
「ちち、あれを見過ごすの」
ピコーナの言う方向に鬼たちの騎馬兵が走っていた。
「少し禍々しい雰囲気だな。ドラゴニアに向かっているようだな。前に降りてくれるか」
晴明は何かを感じ取り騎馬兵たちの前に躍り出ると片手を開き土壁で行手を遮った。
「貴様!何をする」
不偸の木戒鬼は叫んだ。
「君たちはドラゴニアに向かっているようだが天鼓の兵かな」
「貴様こそ何者だ!我らを阻んでタダで済むと思っているのか」
「晴明だが少し事情を聞かせてもらえないかな」
天鼓の兵であればその名を知っているはずだが
「何者か知らぬがそこを退け」
晴明はそこで天鼓の言葉を思い出した。黄泉津の残党、五人の鬼を
「もしかして黄泉津の手の者か、それならわかった」
木戒鬼へ向けて火弾を足元へ放った。
「ふふっ面白い、貴様で肩慣らしをさせてもらうか。行け者ども」
号令と共に鬼たちが晴明に襲いかかっていくが目にも止まらぬ速度で避けながら木戒鬼へと近づいっていった。
「大人しく帰ってもらえないだろうか。無益な戦いは好まない」
馬から叩き下ろし上から眺め告げた。
「ちくしょう!てめえ俺様を五星戒、不偸の木戒鬼と知っての狼藉か」
「なおさら通すわけにはいかないね」
木戒鬼は起き上がると晴明に刃を向けた。晴明は素手で刀を弾き飛ばすと蹴りを入れた。木戒鬼は後方へ吹っ飛んでいくが倒れずに口から血の混じった唾を吐くと
「なかなかやるようだな。仕方ないこれを受けてみろ」
呪文を唱え出すと晴明の周りを黒い霧につつまれさらに無数の真っ赤な呪符が取り囲んだ。その呪符は晴明の体に張り付き動きを封じ繭のような形状になっていた。
「ドラゴノイドの王に使う予定だったんだがな。どうだ気分はなかなかの呪詛だろ、黄泉津様の特製だ」
そう言うと晴明を残し兵と共に先を進んでいった。
残された晴明の繭は微動たりもせず転がったままであった。