△ホルミダスふたたび
晴明は数時間後ホルミダスへと辿り着いた。ホルミダスはアガルタでは随一の商業都市だ。すべての物流がここホルミダスに集まってくる。執政官が住まう館へと向かった。おそらくリボソームがいた場所であろうと思い向かっていたがそこではなく隣の大型の屋敷であった。
「どれもサイズが大きいな。主人のサイズかな」
まさしくその通りであった。あたらしい執政官ヘミングは晴明より大きな男であった。晴明の要望に応え姿を表すと
「地上人が私に御用ということですが・・・もしや晴人の子か!」
初めて出会うにも関わらずいきなりそう呼ばれてしまった。
「そうですがどうして知っているんですか」
「やはり面影がある。わしは晴三郎お前のひいじいちゃんだ」
「あなたが親父が言っていたひいじいちゃんですか。驚いた。晴明です」
「まあいい、奥へ入れゆっくり話そう」
奥の部屋には囲炉裏が置かれ昔の須久那坊にそんな部屋があったと聞いている。ヘミングはあぐらをかいて座るととっくりを持ち込んで茶碗に注ぎ飲み始めた。
「そうか晴明か、聡明そうでいい息子だな。どうだお前も飲むか旨い日本酒だぞ」
「ごめんなさい、願掛けして禁酒しているんです」
「そうかそれなら仕方ないな。それで何の用でここへ」
「ヘミングさんはドラゴニアのことをどのくらいご存知ですか」
「うーむどれくらいと言われてもな。直接会うのはこの街に物品を仕入れにくるものくらいしかしらんのだがな」
「やはりそうですか。ラルヴァンダードでも同じようなものでしたがここに移民してくるにあたって誰も詳しい交渉はなかったのですか」
「いやゴジルがすべて手配していたがあいつかの報告は何もない。ということは気にせんでいいことだと思ってな」
ゴジルはもう一つの都市グシュナサフの執政官だ。やはり魔界転生した人物で晴明とも馴染みのある警察官舎利弗の先祖であった。
「ではこれからグシュナサフへ向かって聞いてみます」
「すぐに向かうのか晴明よ。できればもうしばらく、夕食でも食べる時間はないか」
「そうですね。折角ですもんね。故郷の話でも致しましょうか」
ヘミングの顔が笑顔になった。
「よかった。無理させてしもうたかもしれんが家族じゃからの」
晴明もにっこりと笑顔で返した。
それから晴明とヘミングは炉端で二人で語り合いながら食事をとっていたが禁酒の原因となった大神のことを話しだすと
「そのオオガミというお方、もしや大神明人って名乗っていたことはなかったか?」
「確か探偵さんをしていた時はそう名乗ってましたがそれが」
「わしが戦争へ行っていた時の戦友じゃ。何度も命を助けられどれほど恩義に感じていたか。そうかそうじゃったのか?!」
「どうしたんですかヘミングさん」
「一週間ほど前夢の中に出てきたことを思い出したんじゃ」
「ええっそれで」
「わしはな、この執政官をする前、おぬしの父親晴人と再開したんじゃがその湖の近くの小屋に住んでおったのだがその小屋に大神いる夢を見たんだ」
「それはどこですか」
「ラルヴァンダードの近くさよ。そんなに離れておらんが寂れたところだ」
「ごめんヘミングさん、いくよ」
晴明は飛び出して行ったのだった。




