△帰還祝い
下船したひなたたちは宿の大広間に集まっていた。大広間といっても晴人の旅館は団体客を取ることはないので二十数名が宴席を行えるほどの広さだ。四つのテーブルにはそれぞれすき焼きの準備が設置されていた。
出口に近い下座には元太郎たち牛頭家の四人、そしてその隣は輝也と喜多屋、ひなたに鬼無瀬、次は白鳥夫妻と軽足とフー・スー、最後は晴人の席にはタマモと槌熊が座っていた。全員が席につきコンロに火が灯されると晴人は立ち上がり。
「よく無事で戻ってきた、おかえり!君たちの活躍は三博士たちから報告を受けている。よく頑張った、この調子でエンド・クエイクの苦難も乗り越えていけると思っている。さあグラスを持って・・・乾杯!」
ビールやジュースを飲み干すと牛脂の焼ける匂いが部屋に立ち込めていた。各々旅の思い出を話し極上の肉を堪能して宴席は終わりを告げた。
「旦那様、洗い物が終われば娘たちと今日は帰らせてもらいます。勝手を言って申し訳ありません」
「何言ってるんだよ元さん、洗い物は明日でいいよ。早く帰ってゆっくり家族で過ごしなさい」
晴人は元太郎達を無理やり返してあげると白鳥が
「僕たちはジロー君を送って行って家に帰るよ。ご両親はまだ知らないんだろ帰ってきていることを」
「いやミッチー、知らせてあるよ。今日中に戻ると喜多屋さんには」
「色々とありがとうございます。ひなたのお父さん、早く帰って安心させます」
「ヤジロウさん、ヴァイオリンを」
アオイはアイテムボックスから出そうとすると
「ごめんしばらく預かっておいてくれないかな。そんな高価のものパパもびっくりしちゃうから内緒にしておきたいんだ」
「そうですわね。私が大切にお預かりしておきますからまた演奏聞かせてくださいね」
「喜んで、帰り道は同じ方向だから途中まで一緒に帰ろうアオイ」
こくりと頷くアオイであった。
白鳥達が旅館を後にすると
「晴人の旦那、俺たちは泊まって行っていいんだよな」
「もちろんさ、ほらフーもうちのやつとまだ呑んでいるだろ
「そうよ晴人、リサちゃんもお泊まりするんだから」
女三人肩を組み酒を呑んでいるとひなたは
「パパ、みんな帰っちゃったね。輝夜もお泊まりするんでしょ」
「今日はそのつもりだが明日は軽足さんと帰るよ」
「じゃもっとお話ししましょ。ボクはお風呂入ってくるから後でね」
ひなたが広間を出て行くと
「おい槌熊、俺たちも風呂に行こうぜ。少し話したいことがある。輝夜も来いよ」
晴人も二人を連れ広間を後にした。