△帰路
「もうすぐこの旅が終わっちゃうなんて、寂しいよな。一緒にいたことが夢のようだ」
観月旅行から一週間が経とうとしていた。喜多屋はひなた達四人との行動がもう直ぐ終わると思うと寂しくなっていた。
「ボクもヤジロウや輝也と一緒で楽しかったよ。これで終わると思うとこれから退屈になるな」
「私もヤジロウさんとご一緒できて嬉しかったですわ」
「僕は別にどうでもいいけどこんな生活もいいなと思ったよ」
ひなた達も尺別の想いをしみじみと語っていた。
「このまま、晴ちゃんを追いかけて異世界大陸へ行っちゃおうか」
「ママいいの、ボクも賛成だよ」
「えっ、お前タマモの娘だったんかよ。そういえば何となく面影が晴明と似ているな」
「そうよ、槌熊ちゃん私の可愛い娘よ」
「そうかそれであんなに強かったのか。それとあの赤と青の頭の子達も何か特別な子供達なのか。赤の子はスピードでキカザルに青い方はミザルの動きについてきていたが」
「あの子達は普通の子供よ。ただ小さい頃から私が鍛えているから三人ともイッパシの戦士よ」
「それと俺を使役するジローに輝也がいるなら今直ぐにユートガルトへ行っても通用するぜ」
「ダメですよ。槌熊さん、この子達は家に帰さないとタマモさんも変なことを吹き込まないでいただけますか」
「ごめんね。リサちゃん冗談よ冗談、ちゃんと家に帰しますよ。晴人も心配しているし」
そんなことを言っているとベルデの館内放送が流れた。
「そろそろ出発しますよ。私はここにいないといけません。後は船のナビに任せてありますのでゆっくりくつろいで乗船ください。十六時には須久那坊に到着いたします」
そう言い終わると天井のハッチが開かれていき、ゆっくりと浮上するドーマハルト号、ひなた達は窓から外を眺めていた。
「すごいよママ、どんどん高く舞い上がっていくよ」
「あっという間に雲の上だ。飛行機と違って景色をゆっくりと楽しめるね、飛行船は」
熱心に外を眺める喜多屋の元へアオイがオレンジジュースを持ってやってきた。
「お客様機内サービスです」
「ありがとうアオイもこっちへきて外を一緒に見ようよ」
喜多屋は少し横を開けアオイも外を見れるようにずれた。
「タマモもここへきて一杯付き合えよ。到着まで一時間少しかかるだろ」
「ほいよ!ビールでいい。リサちゃんは」
バーカウンターの中を物色するタマモは鬼無瀬も誘ったが
「いえ、もう任務に入りましたからご遠慮します」
「お堅いのね。じゃ家に着いたらお風呂入ってやりましょう」
飛行船は水平移動に移行していた。
そのころ須久那坊では
「四時にうちの奴が子供達と戻ってくるそうだ。ミッチーもそのまま歓迎会に付き合ってくれるよな」
「もちろんさ、晴人、その前に家に戻っていいワインを持ってくるから待っときな」
白鳥夫妻は戻って行ったのだった。
「元さんにも知らせなきゃ」
と厨房へ向かって行った。