△伊賀の忍者オオガミ
「あのね、お茶室であの不思議な香を嗅いだとたん意識がどこかに飛んでいちゃう気がしたらぼろぼろのお寺のみすぼらしい仏像のあるお堂で隣に知らない僧衣を来た男の人が座っていたんだ」
「僕もそうだったんです。巫女さんが横たわっていたんで驚いちゃいました」
「君たちはすぐにお互いが誰かわからなかったんだね」
「でもその女の人をよく見るともしかしてひなたじゃないかって気がして聞いてみたらそうだったんだ」
「僕も驚いたよ。いきなりひなたって、それで見返すとヤジロウだとわかったんだ。でも少し大人になっていたんだ」
「そうしたら心の声が聞こえてきて、僕は水無瀬弥治郎って人の体に乗り移ったと理解したんだ。ひなたもひなっていう娘に憑依していたんだ」
「そうそう、驚かないでよ、その子は戦国時代の須久那坊の娘で貧乏だったから売られちゃって熱田神宮で巫女さんやってたんだ」
「僕は満腹寺の修行僧でひなの幼馴染だったんだ」
「それで偶然出会ってなんだかんだあって二人は駆け落ちしてたみたいなんだ」
モニターに映る晴人は驚いて
「うちの旅館の娘だってそれに満腹寺の坊主!駆け落ちなんて馬鹿なことを・・・まあいいそれでどうした」
「ピッカと光ると雷の音が聞こえて雨の音でここに雨宿りしていたことが分かったんだけど突然お堂の扉が勢いよく開かれて誰か入ってきたんだ。それが角の生えた男の子でツキノワと名のったんだよ」
「ツチグマの息子のツキノワか、そうだよその話ツキノワから聞いたぞ。五百年前、ユートガルトから逃げ出したベゼル教の幹部たちを追いかけてオオガミさんとツキノワがこの世界に来て木下藤吉郎と出逢うんだ」
「晴兄さん!その通りだよ。ツキノワはオオガミさんとこのお堂で待ち合わせていたんだ。そこでオオガミさんに助けてもらおうと僕とひなたはお願いしたら水無瀬弥治郎の不思議な力で協力してくれって頼まれたんだ。銀羽教の偵察を」
「不思議な力?どんな力だい」
晴明は喜多屋が宿った水無瀬弥治郎に力をある程度予測はしていたが聞いてみた。
「オオガミさんが僕の持っていた錫杖、玄武の頭部に遊環が六個ついているのを見てその錫杖が使えるのかって聞いて来たんだ。そしたらさ頭の中で弥治郎の声が聞こえてきて使い方を教えてくれたんだ」
「やっぱりそうか水無瀬家の人間ならありえるな。戦闘服を装着できて戦闘鬼を召還できたんだな」
「晴兄はよく知ってますね。その通りです」
「君の従姉の晴海が使っていたんだよ」
「ええっ!晴海姉ちゃんがびっくりしたな。それとひなたの能力にも驚いてくれたよ」
「ひなたのバカ力か、そんなわけないはずなだけどな。人の体に乗り移っただけなのに」
「へっへん、晴兄、術が使えたんだよ。炎弾の呪文やほかの呪文も」
「本当かひなた、あんなに訓練して全然発動しなかったのにそのひなってご先祖様は呪文を使えたんだな」
「違うよ。普通の人だったよ。ひなも驚いていたよ」
晴明は首をかしげて考えていたが晴人が
「普通の人だったから使えたのかもしれないな。それで偵察任務ってのはどう言うものだったんだ」
「それがオオガミさんたちは藤吉郎様の命で墨俣城に巣食う銀羽教の動向を探っていてその集会に僕とひなたが潜入して情報を集めてくることなんだ」
「墨俣城だって秀吉の一夜城ってやつじゃないか、話が面白くなってきたな」
「親父そうだね。歴史的な資料がなくて物語だけの話だとされていたもんね。それでどうなった」
晴明も晴人もすっかり二人の話に引き込まれていた。