△意外な事実のオンパレ
陽子は悲痛の思いで医務室のひなたの手を握りじっと眺めていた。晴明はそんな母を見ていると今まで自分もこんな顔で心配をかけてきたのだろうと思うと居た堪れなくなった。その肩を叩き
「お袋、操舵室に行って親父に連絡しよう」
操舵室には旅館の事務室にある通信機に連絡することができるのだが陽子は動こうとはしない。業を煮やした晴明は
「母さん、ここはベルデがいれば心配いらないよ。親父にひなたと逢えたことを伝えないと、向こうでも心配しているだろ」
母の気持ちを少しでも紛らせてやりたかったのだ。
「そうね晴ちゃん、晴人の声を聞きたいわ、それにありがとう」
陽子も気を使ってくれている息子に感謝をした。
「晴人、無事到着してひなたにも会えたわよ」
モニターに映る晴人に何事もなかったような顔でしゃべったつもりでいたが
「どうしたんだ陽子、何かあったのか」
さすが長年連れ添った夫婦であるすぐにその表情に何かをくみ取っていた。
「親父、ヤーシャがあらわれたよ。ここで建造しているドーマハルト号を狙ったみたいだ」
「そうか・・・晴明、それだけじゃないだろ何があったんだ」
「ひなたと喜多屋君が蘭奢待の匂いを嗅いで意識転生してしまったみたいなんだ」
「蘭奢待?なんでそんなものが・・・宝蔵院コレクションか全く、そんなものまであるんだな。それでどこに意識転生したんだ。戻れるのか」
「報告することがまだあるんだ。リリが天鼓に仕えている。青函トンネルであったよ」
「リリちゃんに会ったの晴!元気にしてたの」
「すっかり大人になっていたよ。頭の角を見なきゃわからなかった。目的は不明だけど古代蟻を率いて何かするつもりだったようだ」
「リリかヤーシャ同様テイマーの資質を開花させたんだな。それでまだあるんだろ新しい事実が」
「驚くなよ。カグヤがやって来ていた。ひなたたちとアルテミス学園に通ってたんだよ。東京への旅行も同じ班で同行していたんだよ」
と話し始めたところで操舵室に輝也がやって来た。
「お久しぶりです晴人さん、黙っていてすみませんでした」
「おいおい、男!?どういうことだ。それにその姿はオオガミじゃないか」
「親父、どうやらクローン体のラスワンでオリジナルの完コピらしいんだ。つまりオオガミさんの少年時代ってわけだよ」
モニターには凍り付いたような顔の晴人がいた。




