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△ヴァルキリー

「風を受けてバイクで走るの気持ちいいね。晴ちゃんの気持ちが少しわかるわ」

 髪を風になびかせて陽子は無人の名神高速を快走していた。小型バイクでの走行しかもノーヘルメットだが取り締まるものはいない。旅館を出て三時間で鈴鹿までやって来ていた。サービスエリアで少し休憩するとそのまま一気に名古屋まで走りだすと

「あれ?そう言えば天ちゃんの名古屋の研究所ってどうやっていけばいいのかしら」

 目的地も確かめずにここまでやって来ていたとは呆れてしまうがそれが彼女のおおらかな気質によるものだった。バイクは名古屋に近づいていくが陽子は今更ではあるがいろいろと考えあぐねていると視界に妙な光景が入った。進行方向の空に真っ黒な穴が開き稲光が轟いていた。バイクを止め

「何あれは?そうだあそこを目指せばなんとかなるかも」

 ただの思いつきではあったがそれが正解であった。何者かが転送インヴィーアを用いてあの場所へやって来ていたのだった。サイコキネシスを使い高速道路から飛び降りると異変の場所を目指した。


「確かこのあたりだと思うんだけど・・・!あっ」

 宝蔵院工業愛知研究所への道路標識を見つけたのだ。その道を進みだすとオーガやゴブリンたちが行進していた。

「あら大変、早く知らせなきゃ」

 と妖魔たち一団の上をバイクを空に浮かせ追い抜いて研究所に向いフルスロットルで走り、入り口にたどり着くとドアを開け

「大変よ!敵が来るから早く逃げなさい!!」

 近くにいた研究所員は陽子の迫力に押され緊急ボタンを押した。大きな音の警戒音が鳴り響くとボタンを押した研究所員を捕まえて

「あなた知らない?ひなたがいるかどうか、中学生の女の子たちよ」

「いえ、知りませんが中学生はいませんよ」

「まだ来てないの、何グズグズしてるの本当にもう」

 警報を聞き警備員がぞろぞろと飛び出してきた。

「あなたたちに手に負える相手じゃないから、ここは私が食い止めるから逃げなさい!」

 と言うとくるりとバク転をしてタマモの姿へと変身して驚く警備員たちを押しのけ外に飛び出して行った。

「君たちはここで待機していなさい。彼女に任せれば何とかなるから」

「所長、あの人は誰なんですか」

「正義の味方ヴァルキリーだよ」

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