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△エンド・クエイク

 晴明は北の岬の先に立ち漆黒の海を束の間見つめため息をついた。

「腹が減ったなぁ。宿探して北海の幸でも楽しむか。その前に風呂、お風呂」

 バイクを押し散策を始めると。そんな願いが叶ってかすぐに宿を見つけることができた。しかも幸運なことに部屋も空いていた。


 風呂で汗を流すと湯船にゆっくりとつかり天鼓の言葉を思い起こしていた。

 世界を一つにするか、そんな夢みたいなことが簡単にできるんだろうか。無益な争いも貧困もない穏やかで平和を築けるのか天鼓。湯煙を見つめぼんやりと体を温めた。

 部屋に戻ると空腹を忘れ温まった体の心地よさに目を閉じうたた寝をしかけたところに

「お客さん、お食事の用意ができましたので食堂へお越しください」

 宿屋の女将が襖の外からの声かけた。はっと目を覚まし

「わざわざお声掛けいただいてありがとうございます。すぐに参ります」

 顔を二回ほど叩き食堂へ向かった。


「今日は冷えたでしょ。今年は寒くなるのが早かったですね。お酒はお飲みにならないと伺いましたので温かいお茶をお持ちしましたのでどうぞ」

 食事の席に着くと急な宿泊にもかかわらず見るからに美味しそうな膳が目に飛び込んできた。お茶を注いでくれると

「お一人でツーリングですか。しかも東京からお疲れになったでしょう」

「いえ慣れていますからこれはタコのしゃぶしゃぶですか、おもしろいいただきます」

 透き通るほど薄く切られたタコをさっと湯にくぐらせ特製のポン酢をつけ口へと運んだ。絶妙な歯ごたえそして口の中に広がる旨味、次は漁港からの新鮮な刺身の数々特にホタテには微笑むほど美味しかった。この瞬間は悩み事も忘れていた。

 布団に横たわると満足な夕食、疲れが溜まっていたのかすぐに深い眠りに就けた。


 翌朝は家族へのお土産探しに漁港へ向かう晴明であった。なんせ美味しものには目のない食いしん坊な家族だ。お土産は食べるものに限る。

「大きなタラバですね。けっこういい値がするんですね」

「お兄さん男前だから少しおまけしてあげるよ。五杯で一杯サービスしてあげるよ。送料もサービスしてあげるよ」

「へえそれじゃ安いね。持って帰るから送料分何かサービスしてよ」

「さすが関西のお人だね。この羅臼の昆布つけてあげるよ」

「よし商談成立、ありがとう」

 アイテムボックスに土産をしまうと大きく息をしてバイクのキックレバーを蹴り心地いい単気筒のエンジン音を響かせ神戸へと出発した。

 そして昼すぎその時は来た。景色の変わらない単調なまっすぐな道を進んでいた晴明は突然バイクを止めヘルメット脱いだ。その時大地が大きく揺れ始めた。

 両手を巧みに操ると卦のウインドウを無数に展開して日本全土の情報を網羅し始めた。マグネチュード8クラスの揺れが主要都市を中心に起こっていた。しかも例の通信障害が全土に起こっていた。のちにエンド・クエイク、世界終末震災と呼ばれた黄泉津(よもつ)の起こした地震であった。計画通りであればこの世界のどこかにユートガルト大陸も転移されてきているはずであった。


「しかたないプランBで戻るとするか」

 晴明のプランAはゆっくり汐風に当たりながらフェリーで舞鶴経由で実家に戻るコースだったが晴明は来月開通式が行われる第二青函トンネルを目指していた。宝蔵院建設がジョイントベンチャーの中核となりプロジェクトされたもう一つの青函トンネルだ。鉄道だけではなく一般道路としても運用される。最終の点検を終えトンネルは開通していた。ブル・テンミニッツからの提案でそのトンネルを使って本州に向かっていたのだ。

 工事関係者は避難している誰一人もいない停電で真っ暗なトンネルの前に晴明はいた。

「地獄の底への旅と洒落込むか」

 エンジン音が響くだけのヘッドライトの明かりは先の見えない暗闇を照らしていた。

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