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〇ゲートポイント

「ミス・ペティ、平和になってあまり仕事なくなっちゃったね」

 Qはパンをちぎりながら嘆いていた。

「いいじゃない、私たちの仕事がないということが一番なんだから」

 ごくごくとビールを呑む。

「でもせっかく作ったガジェットの出番がないのはさみしいよ」

 二人は今日の仕事を終え、山猫軒で一杯やりながら食事をとっていた。

「なんか騒がしいグループがいるな」

 Qは目を見開き驚いてそのグループに駆け寄る。

「タマモちゃん、どうしてここにいるんだい。異世界に行ったんじゃないのか。それにオオガミ司令官にイソルダ、アルジェ!あれっ髪の色変えた?」

「知り合いなのタマモさん?」

「ちょうどよかったわ、あれまた作ってくれる」


 ハルアキたちが異次元牢獄から脱出したところはタマモの故郷の村だった。

 昨夜のことだった。


 白い空間からハルアキたちが飛び出してきた。

「やったー脱出成功だ。ほら、星がきらめいてるよ。あれ?月が二つあるんですけど」

 口をポカンと開けたまま夜空を眺めるハルアキ。

「あらユートガルトじゃない」

「本当なのタマモさん」

「そうじゃな。ユートガルトに出てしまったか」

 ドーマは暦のウインドウを出して星たちを計測し始めた。

「わしとオオガミがここを出て平安に滞在した年月と時を同じくしてるようじゃ」

「戦争が終わって三年か」

 なくなった友たちに祈るようにオオガミが目を閉じた。

「あれ、ここ私の村の近くよ。あっちに村」

 タマモが走り出したのでみんなでついていった。

 無人の村にたどり着きタマモの両親の墓の前に着いた。枯れてしぼんだ花が供えられていた。

「私がハルトのところに行ったまままだわ。花を摘んで来るから待ってて」

「この村で私たちはタマモに出会ったのよ。迦樓夜叉(カルヤシャ)に滅ぼされ泣いていた子があんなに立派になるなんて、これが両親と兄弟たちの墓よ」

 茜がしみじみ語った。僕はまた迦樓夜叉に怒りが湧いた。タマモが戻り墓を掃除して花を供えた。

「お父さん、お母さん、兄ちゃん、姉ちゃん、ほらこんなにかわいい子供ができたのよ」

 僕の頭を撫でた。しかたない今日は合わせておこう。

「おじいちゃん、おばあちゃん、おじさん、おばさん、安らかに眠ってください」

 と僕は拝んだ。タマモは少し涙を流した。(ホタル)が4匹、墓のまわりを飛び回っていた。

 僕の母さんも早くに両親を亡くしていたが墓参りをしたことがなかったので、なんだか代わりに拝んだ気になった。

「ありがとうハルちゃん」抱きしめられた。

「ここで夜を過ごして明日ドメルに向かって人探しだ」

 ドーマが僕とタマモの背に手をかけてポンポンとたたいた。


 ということでドメルの山猫軒にいる。ここに来るまで異世界ファンタジー満載の街をきょろきょろしながら僕は興奮していた。ドーマは人化の呪符を張って眼鏡をかけて変装している。こちらではあの仮面も素顔も超有名人だということでこんなことになっている。


「ゲートポイント発見機かい。たやすい御用だがなんでまたそんな」

「ちょいと込み入ったことになちゃって、ありがとうQちゃん」

 ほっぺにキスをしてQが照れた。

「そうだ、新しい発明があるんだ」

 カバンからカメラのようなものを取り出して、僕らの方にシャッターを押した。

 するとポラロイドのように下から写真が出てきた。

「わお、写真じゃないですか」

「写真、いい言葉だね。採用するよ」

 そして何枚も僕たちを撮ってくれた。

「これいいわね。ありがとう」

 タマモは自分と僕とドーマが写った写真を見つめていた。


 山猫軒の食事は美味しかった。タウロは入念に味見をして厨房を覗きに行ったりしている。茜と葵もメニューをよく知っていて美味しそうなものをどんどん注文していた。フースーは目の前の食べ物を夢中で食べて「美味いにゃ美味いにゃ」の連呼を発している。

 タマモが階段のところで手招きしている。獣人の女性と話をしているちょっとタマモさんに似ていた。

「ヘルマおばさん、この子かわいいでしょ。息子なのよ」

「(仮)のお母さんでしょ。ハルアキといいます。こんばんわ」

「タマモのおばのヘルマよ。あら、この子ドーマハルト国王にそっくりね、まさか国王の?」

「違うわ、よく似ているだけよ」

 ドーマハルト国王、聞いてないよ。ドーマは王様だったのびっくりだ。顔を伏せて座っているドーマを二度見した。

「おばさん、今日は泊っていくから四人部屋二つ空いてるかしら」

「大丈夫だと思うわ二部屋ね」

 受付のカウンター向い指で丸印を作る。

 美味しいユートガルト料理ごちそうさまでした。部屋に向かいその日は何事もなく一泊した。


 次の日、ドーマ、オオガミ、タウロ、茜、葵は宿屋で待機して、僕はピコーナ、タマモ、フースーと街へ出た。

「ピコちゃんお洋服買ってあげようか」

「ピコッピコうれしい父の母」

 またいつもの時間の始まりだ。どこへ行ってもタマモはタマモだ。

 フースーは買い物に興味なさそうだが、食べ物には引き寄せられている。預かっていたこの国のお金がどんどん減っていく。

「もう、お金なくなっちゃうよ。買い物や買い食いはこれでおしまいだよ。早く探査機もらいに行こうよ」

「もう、ハルちゃん、わかったわよ」

 ヘイ・オン・ワイ書店にたどり着いた。Qさんが店番をしている。

「遅かったね。できてるよ」

 ゲートポイント探査機を受け取った。タブレットのような機械だった。

「しかし君、ハルアキ君といったっけ、ドーマハルト閣下によく似てるね。戦争が終わってから全然姿をお見せにならないんだよ。親戚かなんかかい、閣下の行方知らないかい」

 よく知っているけどいえるわけない。

「さあ、親戚でも何でもないので何も知らないんです。すみませんけど」

 そして宿屋に戻った。お昼も山猫軒で取りながら今後の予定を立てることになった。


 探査機をドーマは操作してマップと連携する。

「近くのゲートポイントはエンドワースのミノにあるようだな。これから隧道を通っていくか」

 エンドワースはユートガルトの隣の国でトンネルで行き来できるらしい。

「美味しいお肉と温泉があるのよハルちゃん」

「本当、楽しみだな。早く行こうよ」


 ハルアキたちはミノへと旅立った。

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