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◎東京へ

 帳簿整理を終えた晴人が食堂にやって来た。みんなは彼を待っていた今夜の主役は晴明だが鍋奉行は晴人だから、すき焼が始まった。

「悪いな期末の申告で遅くなった。晴明、仕事はやっていけそうか学生時代とは全然違う社会だぞ。父さんも最初は苦労したぞ。なんせあの大学は社会の常識とはかけ離れているからな」

 同じ大学で学び、祖父が亡くなる前まで父も東京で広告代理店に勤めていたのだった。

「そんなところも踏まえて白鳥さんが紹介してくれたところだから多分やっていけると思うよ。それよりニーベルングの指輪をよく聞いてんだって長いだろあのオペラ、全部で十数時間の演奏だろ。どうしてまた」

 鍋に火をつけて牛脂を溶かし始める。

「万能の力を持った指輪の争奪戦の物語だが、なぜか気になり始めたんだよ。指輪こそないが俺ら家族たちが巻き込まれていることに似てるかなと漫然と思ったんだ」

 晴明は映画の指輪物語しか見ていないがオペラはそんな話だったんだなと思った。

「東京で暮らし始めたらオペラ見てみるよ。それよりさ、父さんはひなたたちがやっているゲーム見た」

「ホーゾークリエイションのユートガルト・オンラインだろ、あの子たちのアバターには笑ったよ」

「何よ貴方、いいじゃないヴァルキリーちゃん、ねーひなちゃん」

 陽子はタマモの姿をまだ娘たちには見せていなかった。晴人からきつく言われていたからで自分でも娘を驚かせたくなかったからだ。

「さあ炊けたぞ。乾杯だ。晴明いいだろ今日くらいは」

 グラスにビールを注ごうとしたが

「天鼓とオオガミさんに会うまではお酒は飲まないと誓ったんだ。二人と呑み明かして思い出話をするまでは」

「そうだな。俺とママだけで呑むか」

 晴人は俺も含めて三人でと言ってほしかった。そこへアオイとアカネの母タエと父元太郎がやって来た。

「二人もどうだい」

 ビール瓶を持ちあげる晴人だが

「いえ、まだ少し仕事が残っていますから、晴明坊ちゃんこれを就職祝いに」

 包みを開けるとネームが入った万年筆であった。

「ありがとう、(げん)さんにタエさん、大事にするよ」

 すき焼は最後のうどんで送別会は終わった。そして晴明は東京へと旅立っていった。

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