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◎リサと晴明

 ジローが自分の道を自ら選んで帰ったあと。

「お袋、ちょっとテンミニッツのとこ行ってくるよ。ひなたたちの様子を見たくなったから」

 晴明はバイクで研究所に向かって行った。門扉をくぐり駐車場にバイクを止めようとすると

「おう晴明、ひなたたちを見に来たのか」

「ああそうだけど親父は出かけるのか」

「あれだよ。アルテミス学園の授業に行くとところだ」

「ひなたたちは」

「フーと猛特訓中だよ。授業が終わったら拾って家に帰るが晴明暇そうだな。車に乗れ特別講師やらせてやるぞ」

「なんだよ、自分がさぼりたいだけだろ、でも少し興味があるな。付き合うか」

「よし決まった。一緒に行くぞ。ほら車に乗れ」

 晴明はバイクを置いて学園まで父と向かって行った。


「紹介する。頼りなさそうな顔をしているが超一級の陰陽師だ。今日の特別講師として呼んできた。八雲晴明だ」

「親父、生徒はこの子一人だけ?」

「この子はレべチなんだよ。ほかの生徒は基本の座学していてほかの講師が担当している。鬼無瀬(きなせ)リサ君だ」

「初めまして晴明です」

「今日はよろしくお願いします。晴明先生」

 45度の最敬礼で挨拶をした。晴人の携帯が鳴った。

「悪い、テンミニッツからだ。長くなりそうな気がする。先に教えといてくれ、そうだな禹歩(うほ)の手本見せてやっておいてくれ」

「えぇっ、そんなあ~」

 道場に二人っきりにされてしまった。彼女は黒髪のロングヘア―に大きな目。身長は170近く体操服を着ていた。

鬼無瀬(きなせ)君は陰陽道を修行し始めてどのくらいかな」

「五歳の頃から母に教えていただいております」

「今何年生かな?」

「中学二年です」

「えっまだ中学生、それにお母さんにってどういうことですか」

「はい、我が家は鎌倉期から続く陰陽師の家系で父は、先生もご存知かもしれませんがベゼル教に殺されました。母も全くの素人ではなかったので基本的なことを教えていただいておりました」

「それは残念だったね。私は鬼無瀬さんという方は存じていないが同じくベゼル教と戦った同士だったんですね」

「御堂のおじさまの紹介でこの学園に入学してきました。復讐の為ではありませんが実戦的な術を学びたくてお願いします」

「復讐からは何も生まれない愚かな行為だよ。わかっているようだね。では始めようか、鼓は打てるかな」

「はい!」

 片膝をついて鼓を打ち鳴らした。その音色に合わせ晴明は擦り足で舞い始めた。道場を幽玄の狭間へと誘った。

「どうですか。この領域を作り出せれば次に放つ術の威力が格段に上がります」

 晴明は理論と実際を手取り足取り指導した。

「少し休憩しようか。まったく親父様はいつまで電話してんだよ。本当にテンミニッツか?遊びの連絡してんじゃないか」

「ふっふっ仲良しなんですねお父様とうらやましいです」

「いやいやそれほどじゃないよ。ところで鬼無瀬はどんな系統の流派なんだ」

「それが鬼無瀬は鬼を使役することを術の本流としておりましたが父でなければ伝えられなかったみたいで私は何もできません」

「鬼を使役するか式神でもなさそうだな。どんな術だろう・・・あっあれかも」

「何かお分かりになるんですか」

「いや僕の昔の知り合いが日輪と月光という鬼を使役していたんだ。親父とも相談して調べてみるよ」

「お願いいたします」

「悪い悪い、長電話になって、それじゃ鬼無瀬君、授業を始めよう」


 それから90分の授業時間を少しオーバーして研究所に二人は戻っていった。

「親父、鬼無瀬もあの戦いの犠牲者だったんだね」

「聞いたか、御堂からもよくしごいてやってくれと頼まれているんだ。鬼の使役か難しいな現代じゃ」

「そうだよな。平安の時代なら鬼も豊富だったけれど・・・そうだ異世界ならなんとかなるかも」

「そうだな来るべき日に備えて教えてみるか」

 また一人、縁の糸へと導かれていった。

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