◎三博士
「晴明君も四回生ですよね。進路は決められているんですか。作家生活を行うとか」
いつものようにバイクで研究検体と招待状をもって研究所を訪れていた。
「特に考えてないよ。まずは一般教養の単位がぎりぎりで卒業しないと」
「芸術大学なのに一般教養ですか、あまり合理的ではありませんね。日本の大学制度は、卒業できなくてもうちの企業に入ればいいと思っておいてください」
「そんなの面白くないよ。テンミニッツにはいつも迷惑かけているのに」
「ふっふこれを見てもらえますか。おーい入ってください」
テンミニッツは声をかけた。誰か来ているんだろうかと思ったらテンミニッツが二人入ってきた。
「どうしてコピーを作ったの」
「侵略に対しての防衛策ですよ。もともと暗殺など敵対する企業からの防衛にと考えていたんですが天鼓マスターからのハッキング対策です」
「天鼓からのハッキング?そんなことがあるの」
「ええ、マスターならやってくるでしょう。私でも考えますから、今の私はネットワーク接続を遮断してデータの読み込みも書き込みもアナログな方式でやっています。大変時間がかかる作業なのです」
「つまりウィルスをテンミニッツに感染させる攻撃があると、たしかに君がいなくなるとどれだけ打撃があるかわからないね。それで三人に増員したってこと」
「私がロッソ、そしてブル、ベルデと呼び合っています」
「どこが違うの区別できないよ僕には」
「髪のメッシュの色が違うでしょ。私が赤、ブルが青、ベルデは緑になっているでしょ」
確かに数本の毛の色が言った通りになっていた。
「愛知と神奈川に研究施設を増設しましたのでそこの私を演じてもらいます」
「ネットワーク接続をしてないということは三人で会議とかはどうするの」
というと三人は会話を開始した。何をしゃべっているのか僕に全く聞き取れなかった。
「キュルキュルとしか聞こえないんだけど」
「100倍速で会話しているんですよ。効率的でしょ」
「ふーん便利だね機械の体も」
「晴明君の体も作りましょうか。授業を効率的に行えますよ」
「遠慮しておくよ。僕は一人きりでいいんだ」
「ロッソ、晴明君が困っているよ。彼は一人がいいんだよ。それは仲間を巻込みたくないっていう心理から生じているんだ。それより今日の新しい検体の分析が済んだよ」
「ブル、人の心を簡単に理解したように聞こえるがもっとデープランニングしてみるといい彼はもっと繊細で複雑な環境を生きてきたんだ」
「人の心で遊ぶのはやめてよ。わかったことを教えてよ。普通のスピードで」
緑のメッシュのベルデが報告を始めた。
「今度のものも昆虫ベースですが飛行するためにかなり重量を落としていますね。おそらく蛾の一種をベースに雌体で卵管を供えています」
「哺乳類や鳥類のようですね。興味深い」
「受精した卵もあり、ディアマンティスと同じDNA構造を持っていました」
「つまりこの蛾はディアマンティスを生むてこと、一度にどのくらいの卵を産むの」
「およそ一万個、産卵後の生存確率を10%とみても千体のディアマンティスが生まれますね」
「モスバードと命名しました」
「蛾なのか」
晴明はガスターのことを思い出したが似ても似つかない形態であった。天鼓は彼女をベースに改造したのなら猛毒も備えているのだろうと思った。討伐する際は相手の戦闘力も低くあまり傷つけないように瞬殺したのでその能力を見ることはなかったが
「毒はあったの」
「いえ、やはり無関係な人間に被害を出さないようになっているんでしょう。マスターの優しいお心遣いが読み取れます」
こんな改造生物を作っておいてお心遣いなんて言葉を使うなんてこの三体、三博士たちも少しおかしいなと晴明は思っていた。




