◆ヘミング
晴人とヘミングはダルトン達と食卓を囲みながら大いに騒ぎ料理をつまみ晴人の持ってきた日本酒を飲んでいた。
「晴人、この鰻は旨いな。旅館の近くにあった鰻屋の味にも負けておらんぞ」
「あそこはな、日本にも疫病がはやって外出規制やらなんやらで世界中大変なことになって店をたたんでしまったんだ。その時たれをもらって旅館で使っているんだ。それを持って来ていたんだよ」
「そんな大変なことがあったのか、うちの旅館はどうだった」
「宿泊客のキャンセルやなんやで大変だったがどうにか助成金とかで難は逃れて大丈夫だったが、その疫病も話したベゼル教団が起こしたものだったんだ」
「そんな奴ら相手によく頑張ったもんだ。あんな泣き虫がな」
ほろりと涙を流すヘミング
「ほらこれも呑みな」
ダルトンがグラスを晴人とヘミングに渡した。晴人は一口飲むと
「モヒートじゃないか、じいちゃん焼酎によくハッカを入れて飲んでたよな」
モヒートはドライ・ラムにライム、ミントの葉、砂糖を混ぜたカクテルだった。
「ダルトン、覚えていてくれたのか。昔はよくこいつで呑み明かしたもんだったな」
「ああマンマとな」
「リボソームはどうしている」
「あんたがここの仕事を断ったせいでホルミスダスで執政官をしているさ」
「それはあんたたち親子には迷惑をかけたな」
「そう思うんだったら、改めて受けちゃくれないかここの仕事を」
「じいちゃんやってやれよ。これからここは観光の拠点になるんだぜ。旅館組合の理事長までしていたんだろ、その手腕を行かしてやれよ」
ヘミングは腕を組み考え込んでいた。
「晴人の頼み事は一度たりとも断ったことがなかったな」
ダルトンの手をつかみ握手すると
「わかったよ手伝ってやろう」
「やったな、そうと決まればガンガン飲もうぜ」
ヘミングたちは一晩呑み続けたのだった。
一夜明けダルトンの店にバスクルが戻ってきたのであった。酔いつぶれ店の中で眠っていた晴人に
「晴人さん、呼んできました。ハルトの街に停泊しています」
ぼんやりした顔の晴人は
「バスクルありがとう、これで元の世界に戻れる」
飛行船ドーマハルト号を呼びにマナーコまで使いを頼んでいたのであった。飛行船の茶室には元の世界へ戻れるトンネルがあるのである。
「ハルト帰るのか、出会えてよかった」
「俺もだよじいちゃん、またすぐにひ孫と女房と逢いに来るから、ダルトンもいろいろありがとう」
「俺こそヘミングを説得してくれてここももっといい街になるぞ」
晴人は大ヒクイドリに乗ると地上への出口へと向かって行った。




