◆ラルヴァンダードの執政官
「なんてことだ。次から次へと厄介なことに」
宝蔵院たちの眠っていた部屋の窓開け放たれたままとなっていた。風が吹き抜けカーテンだけがゆらりと揺れていたのであった。
「もう黙って出て行くなんてどういう領分なのかしら」
看護していたマリアは少し怒っていた。
「まあ元気になったんだろ。そのうち礼に来てくれるさ。マリアそれよりヘミングが戻ってきているんだ」
「まあ、やっと仕事を引き受けてくれる気になったのかしら」
ダルトン夫婦の興味はヘミングへと移っていった。階下の店へ戻るとヘミングはバーバレラと話をしていた。
「ダルトン久しぶりに街へ来たらあの婆さんがこんなに若返っているなんてどういうことだい」
宝蔵院の術によって死から戻ったバーバレラの変貌ぶりにヘミングは驚いていた。
「驚いたかいマスター天鼓様が若返らせてくれたのさ。今ここで眠りに就いていると聞いて急いできたのさ」
「それは一足違いだったな。失踪してしまっただ」
「ダルトンどういうことだい」
「言った通りのことさ。気が付いたらいなくなっていた」
「頼りないことだね、それでヘミングが来たってのかい」
「?バーバレラどういうことだ」
「晴人さんかい、このヘミングはここの執政官をリボソームから頼まれたとたん行方をくらましてそのままさあ十年になるか行方知れずだったのにここにいるものだから」
「じいちゃん・・・そういうことか」
「晴人面倒だったもんでね。ダルトンもバーバレラもそんなつもりでここに来たんじゃないんだ。晴人と一杯しに来ただけだから詮索は無用だ」
ヘミングは晴人の方を向いてぺろりと舌を出していた。
「仕方ないな言っておくか。じつはヘミングは転生者だって知っていると思うが俺のじいちゃんなんだ」
「えっそれは本当か!めったにないことだぜ。知り合いに会えるなんてこれは乾杯するしかないな。マリア準備だ」
ダルトンは厨房に走って行ってしまった。
「ばらしてよかったのかなじいちゃん、大騒ぎになるぜ」
「わしも騒ぎたい気分だよ。早く鰻を焼いてくれ」
晴人はウインクすると厨房へ向かって行った。




