◆裏切り
オーディンの馬は一人の男の姿へと変化した。晴明と宝蔵院は声をなくした。
「どうした晴明、知っている男か」
「父さん、あれは黄泉津だよ」
その答えに全員に緊張が走った。
「おやおや、少年よ。私のことを知っているようだな。何故かな。まあいい、ハクトよ。よく稷兎を連れてきてくれたな」
黄泉津はオオガミを見ていた。
「じろじろ人のことを見るんじゃないぜ、お前なんか知らないがなぜかムカつくことだけは確かだ。何が目的で俺たちの前に現れた」
オオガミは珍しく怒りの感情をあらわにしていた。
「記憶がなくとも相変わらずの男だな。そこがいいところなのかな」
「オオガミ挑発に乗るな。黄泉津、俺は八雲晴人、お前と違ってオオガミのマブダチだ。ここに呼び寄せた理由はなんだ。まさか仲直りでもするためじゃないだろう」
「ふっふ、似た者同士惹かれ合うようだな。私の壮大な計画にご協力願うためとでもいっておきましょうか」
そう言い放つとハクトダルヌに合図を送るとオオガミに抱き着いた。いきなりの行動に戸惑いオオガミは自由を失っていた。黄泉津の手が光るとハクトダルヌは液化してオオガミを覆いつくした。晴明は剣を取り出し
「オオガミさん!」
オオガミに向かおうとする晴明を晴人は止めた。
「オオガミを開放しろ、さもないと」
晴人は晴明から天叢雲剣を奪い黄泉津に突き付けた。
「なかなかいい、君には興味を持ったよ。しかし言うことを聞くわけにはいかない」
指をパチリと叩くと天井からバリアが降りて来た。ガラスのような筒に黄泉津は囲われたのであった。
「返せよオオガミさんを」
バリアを殴る晴明
「それじゃ皆さん、さようなら・・・そうだ十五年後にまたお会いしよう」
冷血な笑みを浮かべるとバリアの筒は地中深く潜航していった。




