◆お子様ランチ
「ところで水無瀬さん、新しい姿に変身したそうですね。興味深い見せてもらえませんか」
宝蔵院は真っ白な戦闘服にチェンジした晴海のことを晴明から聞いていた。
「えっ今、食事中でしょあとにしてよ」
「あっそれはすみません。気が利かない男ですね。もっと食事を楽しむようにしないと」
「それが天鼓だからね。仕方ないよ、さあもうすぐ鍋がくるよ」
晴明はうきうきしながら言っていた。
炭火を熾した焜炉が四人に一個づつ配られ、ぐつぐつ既に煮えた鍋がやって来た。
「本当に毒のある魚なんですよね。食べても平気なんでしょうか」
「大丈夫ですよリリのお父さん、料理人のタウロの腕は超一流なんです。毒のある部位はすべて取り去られていますから、僕から食べてみましょうか」
箸でフグの身をつかむとポン酢の中をくぐらせてパクリ、幸せそうな顔を浮かべる晴明、その表情を見ると誰もがそれの味をいち早く知りたいとなったのであった。案の定一斉に鍋に箸が伸びた。
「旨い!」
「美味しい」
誰もが口々に感嘆の声を上げていたが一人リリだけが箸をつけなかった。それを見た晴明が
「美味しいよ。怖がらなくても大丈夫だよ。さあ食べてごらん」
「ごめんなさい、この子猫舌なんです」
リリの母親が申し訳なさそうに言ってきた。
「ああ、ごめん、気が利かなくて、タウロに言って子供向きの食べ物を用意するからちょっと待ってね」
厨房へ向かうとタウロが逆に表れた。
「お嬢ちゃんがいるのみただで、お子様ランチを作ってきただす」
ワンプレートにチキンライスのエビフライ、ハンバーグが付いていて旗まで挿してあった。
「ナイス、タウロ、さすが料理人の鏡、食べる人のことをいつも考えているんだね」
タウロからプレートを受け取るとリリの前に置いたのであった。
「うわ!かわいい、ありがとうタウちゃん」
にこにこと笑い、スプーンを突き立てた。
「なんか僕も食べたくなってきたなぁ、また今度作ってもらおう。タウロお願いね」
「まかしてだす。楽しみに待ってくれるといいだすよ」
タウロも上機嫌で厨房へと戻って行った。あとは締めの雑炊だ。
タイミングばっちりにタウロが雑炊の用意を運んできた。てっちりだけにばっちりだとタウロが言いながら、それはみんなにスルーされてちょっとがっかりなタウロであった。




