◆ベルゼブブ考
敵から奪い返した真っ黒な飛行船は晴明たちツーロン島攻略チームを乗せオワリトリアのナガクに向かっていた。
船内では宝蔵院のアバター天ミニによる討論会が行われていた。議題は晴明は採取した真魔の鎧の燃えカスの分析に伴って生じた疑問であった。
「貴具さんが記録した画像を合わせて調べた結果、ベルゼブブの痕跡は発見できませんでした」
天ミニは淡々と結果だけを報告すると
「それじゃあの鎧はミリムとザグレットのただの化身だったてことなの」
残念そうに晴海が言った。
しばらくの沈黙の後「結局ベルゼブブという存在は何であったのでござるのかな」
御堂は腕を組み眉間にしわを寄せて首を深く下にうずめて今度は大きく上にそらした。
「われらが元の世界で押収したやつらの教典にもベルベゼブのベの字さえ何ら語られておらず、最終的に何がしたかったのかもわからずじまいでありましたな師匠」
貴具は御堂と目を合わせてうなずき合った。
「アスタロトやそのほかの汚れた血の半不死のバンパイア幹部たちだけの夢と希望ってものかな、ベルゼブブという存在は」
久遠は自分のメモ帖を取り出してページの片隅に整理し思いつきで書き留めた事柄を述べた。
「夢とはねえ?私以外の血の持ち主たちはベルゼブブと直に会ったことがあるのかしら」
百花は疑問を口にした。
「一緒にいた頃に何も話さなかったんですか」
久遠はメモを取り始めた。
「今にして思えば、私は何のためにバンパイアにされたのかしら?何かの儀式のために用意された生贄だと何も疑問に思わず生きていたけれど」
椅子にどっかりともたれ掛かり上を向いてしまった。永晴はその後ろに回り込み百花を抱きしめて
「俺と出逢うことで幽閉されていた君を助け出し恋に落ちたことで新たな運命が開かれたんだよ」
永晴は晴海を見つけていた。
「今度は私が生贄にされそうになったけどね。晴明が助けてくれなかったらどうなっていたのかしら」
晴明を見つめて悲しそうな顔をする晴海であった。
「封印の丘の封印の謎ですよ。問題はベルゼブブではなく何が本当は封印されていたのかです。一番それを知っているカグヤがいなくなり手元にある世界樹からもらったアーティファクトの使い道もわからないままなんです」
「だぶあを連れてくればよかったのかな」
「そうよ、あのカグヤの石を飛行船のワープゲートからホワイトラビットに渡しに行ったのよね」
地下世界から戻ってすぐに晴明はカグヤの石を始祖の祠にいるだぶあに託したのであった。
「だぶあが言うには15年お待ちくださいだって」
「そうですか。仕方ありませんね。15年待ちながら研究しておきましょう」
答え合わせは十五年後に持ち越されたのであった。




