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◆最終兵器3

 永晴はサバイバルナイフを握って百花に駆け寄り

「ごめん、晴海が泣いているからがまんしてくれ」

 と耳元でつぶやき、鎧に触れている右腕を切り落とすと百花を抱き晴海のところまで戻ってきた。

「あなたありがとう」


 晴明は思い出していた。氷漬けになった黄泉津(よもつ)に卑弥呼が放った呪文を


ちはやぶるかみもみまさば

たちさわぎ

とがはのひぐちあけたまへ


天光束(パラディゾルミーノ)


 天空から城を突き破りレーザーのような光が無数に降り注ぎ鎧に命中したが黒い霧のようなものがその貫通を防いでしまった。

「だめなのか・・・」

 氷結の結界はまだ生きていはいたがそんなに時間は持ちそうにない。


「ママ、無茶しないでよ」

 涙を流す晴海は母の右腕を握り締めていた。

「大丈夫よパパの血を飲めば治るからね」

「晴海の血を飲んでおねがい」

 母の口に自分の肩を押し付けると朦朧(もうろう)とした百花は無意識に噛みついていた。

 みるみる右腕が生えるように再生していくが晴海の血の気がどんどん引いて顔色が白くなる。

「永晴さん大丈夫なんですか晴海は」

「俺もこの再生のスピードには驚いている。俺の血の何倍もの速度だ」

 再生した右手で優しく晴海を撫でる百花、晴海は意識を失っていた。


「ここどこなの」

 晴海は真っ白な空間の中に倒れていた。

「なかなかお転婆(てんば)な娘じゃのぉ」

 どこからか声がする。

「だれ!」

 あたりを見回すと老人?いやヤギの角をはやし下半身もヤギのような魔物がそこに立っていた。身構えながら後ずさりする。

「怖がらなくと大丈夫じゃよ、ひっひひ、よく見てごらん」

 晴海は気が付いた塗壁の中にあるご先祖様の像を

「ご、ご先祖様ですか」

「ひっひひぃ、そうじゃそうじゃ」

「私、死んじゃったんですか」

 晴海は胸を押さえて聞いてみた。

「うんにゃ気絶しているだけじゃ。いいことを教えてやろうと思うてな」

「なんですかご先祖様、私変身できなくなったんです」

「おお、あの姿はプリティじゃな。わしは好きじゃがもっと先があるんじゃぞ」

「ほんとにパパとママを助けられるんですか」

「そうじゃぞ。これを授けよう」

 サテュロスは錫杖を晴海の頭に置き何やら呪文を唱えた。

「これでよし、お行きなさい。晴明殿をお助けしなさい」

 晴海は意識がはっきりしてくるとご先祖様が消えていった。


「晴海、晴海」

 百花はあわてて晴海をゆすっている。

「なに、ママもう朝なの」

 寝ぼけたような受け答えするがふと我に返ると

「大丈夫よ。ママは」

「ごめんね。おかげで手は元に戻ったわ。血を吸い過ぎたみたいだけれど調子はどうなの」

 ふらつきながらも立ち上がる晴海は

「何かスッキリした気分なの今ならあの鎧も倒せそうよ。塗壁君」

 塗壁を呼び出すと錫杖を握ると三回床を叩き、遊環(ゆかん)を揺り鳴らした。


 キラキラと晴海が輝きだす。錫杖は小さな真っ白な日傘へ、遊環(ゆかん)の四つが離れ手足に巻き付き、髪はこんもり盛り上げられリボン、フリルのある純白の法衣へ厚底の編み込みブーツ姿へと晴海を変えた。

「水無瀬晴海!真魔の鎧ぶっ倒してあげる!」

「晴海!かわいいぞ」

 永晴は思わず叫んでしまった。

「あらもモデルチェンジしている。まるでウェディングドレスみたい。晴明への愛の形かしら」

 新しい戦闘服を眺めている。


 真魔の鎧の氷結が溶け始めた。

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