◆地下へ向かう
晴明を先頭に地下へ続く長い階段を下り始めた。
「晴明君、天ミニを向こうのチームに預けてよかったのかい」
「お父さん、僕がカバーしますから大丈夫です」
「まだお父さんと呼んでいいと許したわけじゃないぞ、永晴と呼べ」
「すみません。永晴さん、ところでどうして晴海は変身できなかったんでしょう」
「おそらくトラウマだと思うわ。この子は意外とミスを気にするような子なんで」
「もうママたら、調子が悪いだけよ」
「そうでやんすよ。晴海はすぐに変身できるでやんす」
いつのまにか取説妖怪バットリがついてきていたが変身を拒む心をするどく感じ取って心配していた。
一層目、二層目と下っていくが人のいる気配が感じとれずにいた。
「やっぱり上にいるんじゃないか」
「いえ、いるわ。メリムとザグレットの気配が強くなってきている」
百花は同じ血を持っているせいか本能で感じ取っているようであった。
五層目まで下りると大きな扉があらわれた。晴明は人差し指を口に当て小さな声で
「この中に数人の気配を感じます。突入します!」
わざとバタンと大きな音を立てて扉を開け放って飛び込んでいった。
驚きもせずにザグレットが油すましに変化して杖を振り回すと火球が無数に晴明目がけて飛んでくるがそこに晴明はすでにいなかった。ザグレットは晴明を見失っていた。背後から晴明が切りかかっていったのだ。その晴明に無数のネズミが飛びかかてきたのだ。
「標的、水球弾!」
ネズミたちははじけ飛んでいった。
今度は根角の変身した鉄鼠がマシンガンを構え晴明に発砲した。
銃声が雷のように轟いたが倒れていたのは鉄鼠であった。それより早く永晴のM60マシンガンの銃声であった。
「雑魚は俺に任せてザグレットを討て、今のような手加減は無用だ」
晴明が峰打ちをしようとしていたのを見破られていた。
加速をかけたのか晴明の姿が消えた。きょろきょろとするザグレットの目の前に現れると無想閃光斬、鞍馬一刀神流の秘伝で袈裟懸けに真っ二つに立ち切った。
二つに切り裂かれたザグレットは呪文を唱え始めるが百花が晴明の間に割って入った。
ちはやぶるかみのちぎりしほむろあれ
おほけなしものをしたたむれ
火柱
地獄の業火が地面から吹き上げその半身を黒焦げにした。
「晴明、このくらい徹底的にしないとすぐ復活するわよ」
「はい、助太刀ありがとうございます」
後ろを見ると火車と永晴が闘っていた。百花は今度は永晴を補助に走って行った。
百花が永晴の手を握ったと思うと永晴はぐるぐると百花を振り回し始めた。猛火を吐く火車に向かってしっかり握ていた手を放つと猛スピードで飛び込んでいった。さらに加速をかけていたのか百花は消えた。火車の遥か背後に現れた百花は美しい背中を向けていた。
真っ二つに切り裂かれた火車が崩れ落ちた。
「パパもママもすごい!」
晴海は飛び上がってはしゃいでいた。いつの間にかその横には晴明が立っていた。
「ダイナミックな戦い方だね」
「いつの間に晴明、メリムは何処にいるのかしら」
さらに奥の扉を見つめた。




