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◆ツーロン島作戦前夜

 グラスを持って永晴の元へ向かう晴人、トマトジュースを渡す。

「家族水入らずで今夜の竜宮丸は水無瀬一家の貸し切りだ。明日日の出とともにツーロン島へ向け出発だ」

「娘の借りは俺と百花が返してくるぜ」

「くれぐれも単独行動は慎めよ。俺のせがれもその借りを返す手伝いをさせてくれ」

 晴人と永晴はにやりと笑ってグラスを合わせ乾杯した。


 宴席の中心に戻ると晴人はツーロン島突入班を集めた。

「作戦指揮は御堂、頼んだぞ。補佐には晴明をつける。少々無理な指令も問題ないこなせるはずだ」

「またぁ~もう平安時代の能力じゃないんだよ。御堂さんお手柔らかに」

 へコリと頭を下げる晴明

「心強いでござるな。存分に働いてもらうでござる」

「久遠くん、君は後方で冷静に支援頼む。晴明を無理させないように頼む」

「無理させといて無理しないように注意するなんて、久遠さん頼みます」

「それでではみんな頼んだぞ、竜宮丸の周りで朝を待って夜明けとともに出陣だ」

「八雲さん、僕たちはいかなくていいんですか」

 ヨシュアはサマラと晴人に聞いてきた。

「君たちはこのベールで例の放火事件の調査を頼んだ」

 そしてそれとなくヘイ・オン・ワイを見張るように晴人は頼んだ。


「オオガミ、飛行船に戻ろう。ハクトダルヌたちが待っている。俺たちは今から出発だ」

 八雲夫妻はオオガミ、ヤーシャ、テンコ、軽足とドーマハルト号のある宮殿に戻って行った。


「御堂さん教団はどんな様子なの」

「奴らの飛行船にヘイ・オン・ワイの諜報員が盗聴器を仕掛けてくれたようだ。しばらく天ミニがモニターしているがミリムとザグレット以外のメンバーがまだつかめていない。五名以上幹部クラスが集結しているようだ」

「ヘイ・オン・ワイって本当に裏切っているのかな。どうやって盗聴器を取り付けたのかな?」

「あの飛行船を操舵しているのは誰か知っているだろ」

「リリのお父さんだ。連絡が取れているんだね」

 リリは晴明たちがこの世界に来てであった魔族とのハイブリッドの少女である。宝蔵院によく懐いていたが今は祖父の元で暮らしている。

 その祖父がヘイ・オン・ワイの総帥である。

「今は従うふりをして情報をこちらに送っているんだ」

「危なくないの」

「諜報員として有能なんだろ、拉致され飛行船を操舵することになったのも今となれば作戦だったかもしれないな」

「そこまで疑わなくても」

「いや今は誰も信じられないくらいの気持ちでいたほうがいいのかもしれんな」

 御堂は確信を込めてそう晴明に言った。


 マナーコへ向かう飛行船の中では

「悪いな団長、もっとパーティで呑んでいたかっただろう」

「なに言ってんだよ八雲の旦那、こっちの方が面白そうじゃないかワクワクするぜ。きな臭い戦いはもう勘弁してほしいのが本音だよ」

「キビツ遺跡にはどんな秘密があるか。僕も団長と同じでワクワクしてます」

「団長も天鼓君も興味津々だな。もしかしてヤーシャもそうなのかい」

「ああその通りだ。新しい事実を知るということは快楽の一つだ」

「快楽ってよく言うよ。オオガミはべつにどうでいいって(つら)だな」

 確かに不機嫌そうな表情をしているがそれはいつものことであった。内面を覗かせないためのポーカーフェイスだった。

「何が出ようとも覚えていないことくらい便利なものはないからな」

 自分の過去がどのようであったかは興味がないということらしいそれより。

「晴人、ナガクに寄っていくんだろうな」

 ヘイ・オン・ワイの総帥、ゼペット・ゴランがいる街であった。月明かりの下ドーマハルト号は東へ向かって行った。

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