◎晴人と妖怪
旅館の自宅区画の居間ではスポーツ新聞を読んでいる晴人と隣ではレモンティーを飲んでくつろぐタマモがいた。タマモはいつになく難しそうな顔をして
「ねえぇあなた、晴ちゃんはどうなっているのかしら、ミーちゃん(晴海)も心配だし私、天ちゃんの研究所に行ってもいい」
バサバサと慌てて新聞を畳む晴人は
「そうだなゴールデンウイークも乗りきれたし、そんなに心配なら俺が調べに行ってやろうか」
「だめよ、私が先、こればっかりは譲れないわ!じゃあ」
と言い残すと車のキーを持ち出して裏玄関から飛び出した。
「ちぇっ、あいつは・・・まっよく働いたことだし特別にゆるすか」
すると旅館からのインターホンが鳴り
「旦那様、白鳥先生がお見えですけど」
「?わかった。応接室に通してくれ、そうそうアールグレーも二つ頼む」
「こっちに戻ってきたのかなにかあったかな」
晴人は急に戻ってきた白鳥を不審に思い応接室へと向かった。
「ミッチーどうした、向こうの暮らしが辛かったか」
ソファーに腰を落としてアールグレイを一口含んだ。
「いやそんなことはない。いろいろあって少し晴人に相談したかったんだ」
それから白鳥は地底世界での出来事とヘイ・オン・ワイの裏切りの疑惑まで晴人が地底世界を離れてからの出来事をつぶさに語った。晴人は汲んだ足に肘を乗せこぶしを額に押し当て目を閉じてしばし考え込んでいた。
「しまったな~タマモを行かすのではなかったな」
「なんだい陽子ちゃんは向こうに行っているのか」
「たった今な研究所に向かったよ。二人とも旅館を開けるのはGWが終わったとはいえ無理だよ」
晴人は上を向いてため息をついていた。
「晴人、妖怪の手を借りてはどうだ」
「妖怪の手を借りる?どういうことだ」
「晴海と仲良しの妖怪にぬっぺふほふという子がいるんだが、この妖怪は見た人物に化けれるんだよ」
「便利そうだけどどこにいるんだ」
「おそらく満腹寺にいるはずだ」
「しばらく借りてみるか、行くぞミッチー」
ヘルメットを白鳥に投げてよこした。
「タエさん、ちょっと小一時間出てくるから何かあったらスマホによろしく」
と言っては旅館裏のスーパーカブ125で飛び出して行った。




